消化器外科
現在、日本人の死亡原因のトップは、ガンであり、いまや2人に1人はガンで死亡するといわれています。ガンのうち最も多いのは、食道がん、胃がん、大腸がん、肝・胆・膵がんなどの消化器ガンで、ガン全体の60%を占め、毎年10万人以上が消化器ガンで亡くなっています。早期発見、早期治療に向けた取り組みにもかかわらず、ガンの死亡は増加の一途を辿っています。
消化器ガンの治療で重要なのはガン病巣を的確に取り除くことです。化学療法、放射線療法、あるいは免疫療法などの中には、優れた効果のみられる場合もありますが、手術にははるかに及ばないのが現況です。
教室では、早期ガンには,侵襲の少ない腹腔鏡下手術などの内視鏡手術をおこない、進行ガンには徹底したガン病巣の摘出とQOLを重視した生理的な消化管再建に化学療法、放射線療法、免疫療法などを組み合わせた集学的治療をおこなっています。併せて、治療の難しい膵がん、進行した胃がん大腸がんの病態解明、手術法の開発、新しい化学療法・遺伝子療法をめざした研究に取り組んでいます。さらに、術後のQOLの向上をめざした代謝栄養管理、感染対策についての臨床研究を広く行なっています。
乳腺外科
乳腺内分泌外科では、地域がん診療連携拠点病院として、診療の中心である乳がん診療においては診断から治療まで一貫して行い、生活の質(QOL)を第一に考慮した、患者様にとって最善で安心かつ安全な診療を心がけています。
診療を担当する医師は乳腺専門医であり、化学療法部、放射線科、こころの医療センター、病理部などとのチーム医療を行うことにより、手術療法・薬物療法・放射線療法全般にわたり、乳がん診療のガイドラインに沿った世界標準治療を実践しています。
当科における乳がん手術件数は年間約185例(2010年)です。私たちは乳房温存手術を標準術式とし、病変の範囲が広い方にのみ乳房切除術をお勧めしています。乳房切除術が適応になる患者さんには、術前に薬物療法(抗がん剤治療)を行うことにより「しこり」を小さくして乳房温存手術を目指す「術前薬物療法」を積極的に行っています。また、センチネルリンパ節生検も標準術式として導入しています。これは、腋窩リンパ節(ワキのリンパ節)を全部切除するという従来の術式より手術による後遺症が少ないというメリットを持っています。当科では、RI・色素併用法によりセンチネルリンパ節生検をより正確に行うことが可能となっています。
乳がんにおいては、(術前または術後の)薬物療法(ホルモン療法や抗がん剤治療など)がとても重要な役割を担っています。当科では、乳がん薬物療法に熟知した乳腺専門医が、最新のエビデンスに基づき、それぞれの患者さんに応じた最適な治療内容をご呈示し、薬物療法をより安全に施行することを心がけています。また、臨床試験管理センターの支援のもとに、乳がん薬物療法の治験や医師主導臨床試験に積極的に参加することにより医学の進歩に貢献することも当科の基本方針のひとつとしています。
甲状腺疾患も圧倒的に女性に多いのですが、たとえ「がん」であろうと予後のよいものが多いので、美容に配慮した術式を採択し、総合的な治療成績を向上させようと心がけています。
心臓血管外科
診療内容心臓血管外科専門医認定施設として、新生児・乳児を中心とした先天性心疾患、虚血性心疾患、心臓弁膜症、胸部・腹部大動脈、不整脈ならびに末梢血管疾患まで全ての心臓血管疾患に対応しています。
先天性心疾患
年間平均183例の手術例において先天性心疾患が116例(開心術、非開心術を含む)を占め(2007年)、先天性心疾患の67%が新生児・乳児手術で す。また、心臓血管外科専門医認定機構が定める最高難易度の複雑心奇形が約50%に及びます。小児科医と緊密に連携し、数年にわたる適切な治療計画のもと 初回手術から最終手術までを一貫して施行しています。中でも、総数78の段階的フォンタン型手術例の結果は良好で、手術死亡率は2.7%です。ファロー四 徴症をはじめとする右室流出路形成術も総数は100例を超え、いずれも良好な中長期結果を得ています。
虚血性心疾患
重篤な急性肝動脈疾患においては循環器内科医との連携により補助循環装置などによる循環維持を経由して迅速な手術対応を行っており、緊急冠動脈バイパス術 の最近3年間の手術死亡率は0%です。心拍動下冠動脈バイパス術を標準術式とし、高齢者等のハイリスク患者へ対応しています。
弁膜症
弁膜症術後抗擬古療法の負担を減じるため、65歳以上の弁置換適応例では可能な限り生体弁を使用し、僧帽弁疾患では弁形成術を基本術式としています。
胸腹部大動脈瘤・大動脈解離
術後の大きな合併症である脳・脊髄障害発生を可能な限りなくすため、適切な脳・脊髄血流維持とモニター管理のもとに大動脈人工血管置換術を行っています。
術前検査を外来で施行することによって術前入院期間は2日とし開心術例平均入院日数は21日となっています。患者のQOLの向上と安全を最優先とした手術に心掛けています。
主な病気 | 主な手術 | ||
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消化器外科 | 肝臓外科 | 肝癌 | 肝切除術 |
胆道外科 | 胆道疾患、胆道癌 | 肝切除術、 膵頭十二指腸切除術 |
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膵臓外科 | 膵癌、慢性膵炎、急性膵炎 | 膵頭十二指腸切除術、 膵体尾部切除術 |
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上部消化管外科 | 食道癌、胃癌 | 胃切除術、胃上部切除術、 胃全摘術 |
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下部消化管外科 | 小腸腫瘍、結腸癌、直腸癌 | 腹仙骨式直腸切断術、 結腸切除術 |
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内視鏡外科 | 胆道疾患、早期胃癌、大腸癌、 良性肝腫瘍、脾疾患 |
腹腔鏡下胃切除術、 腹腔鏡下結腸切除術 |
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外科代謝栄養 | |||
呼吸器外科 | |||
乳腺外科 | |||
心臓血管外科 | |||
小児外科 |