診療案内

未破裂脳動脈瘤について

目次

未破裂脳動脈瘤とは

頭蓋内血管の主に血管分岐部などにできた"コブ"(動脈瘤)のうち、まだ破裂していない動脈瘤のことです。ほとんどの場合は無症状で脳ドックや頭痛・めまいの検査でMRAもしくはMRIを行った時に見つかります。中には眼の症状で発見される場合もあります。

この動脈瘤は一般成人の2-6%にあると言われており、基本的には後天的にできたと考えられています。脳動脈瘤は破裂しなければ何も問題ありませんが、破裂するとくも膜下出血(SAH: subarachnoid hemorrhage) になります。どの脳動脈瘤が破裂するのか、しないのかは今の医学ではわかっていません。

現在、未破裂脳動脈瘤の治療は疫学調査等の結果からつくられたガイドラインに基づいて、生涯の破裂率が高いと予測される場合に破裂を予防する治療が勧められているのが現状です。

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当院での未破裂脳動脈瘤の治療適応と治療成績

本邦では5mmを超えると年間約1%の破裂率があると言われており、さらに多発性であったり、サイズが大きかったり、発生部位や形によってさらに破裂率は上がると考えられています。当院では脳卒中治療ガイドライン2015に基づいて、治療適応を決定しています。

脳卒中治療ガイドライン2015
  1. 未破裂脳動脈瘤が発見された場合、年齢・健康状態などの患者の背景因子、サイズや部位・形状など病変の特徴、未破裂脳動脈瘤の自然歴、および施設や術者の治療成績を勘案して、治療の適応を検討することが推奨される。なお、治療の適否や方針は十分なインフォームドコンセントを経て決定されるよう勧められる。
  2. 未破裂脳動脈瘤の自然歴(破裂リスク)から考察すれば、下記の特徴を有する病変はより破裂の危険性の高い群に属し、治療等を含めた慎重な検討することが勧められる。
    • 大きさ5~7mm以上の未破裂脳動脈瘤
    • 5mm未満であっても、破裂の危険性が高いと推測される動脈瘤(症候性のもの、多発性、後方循環、前交通動脈、内頸動脈―後交通動脈分岐部の動脈瘤、不規則な形状、ブレブの存在)
  3. 経過観察を行う場合には、喫煙習慣、大量飲酒習慣の是正、高血圧の治療を行い、半年~1年毎に画像検査を行う。経過観察にて瘤の拡大、変形、症状の変化が明らかになった場合、治療に関して再度評価を行うことが推奨される。
  4. 治療を行う場合には、開頭術(クリッピング)或いは血管内治療(コイリング)を検討する。

上記のガイドラインと検査結果を照らし合わせ、現段階で治療をするよりも経過観察の方が望ましいと思われる場合は、半年、もしくは1年ごとにMRI(MRA)を行って、動脈瘤の形態や大きさが変化していないかを確認します。

当院の未破裂脳動脈瘤の治療に対する考え方は

  1. 治療適応がある症例に対して治療を行う
  2. (ほとんどの症例は術前無症状であり)治療を行っても、治療前と同様の日常生活、社会生活を送れるようにする
  3. 破裂してくも膜下出血になるかもしれないという心配を取り除く

の3点であり、各症例とも術前にしっかりと検査を行いカンファレンスで治療方針を検討し、それぞれの患者様とよくご相談した上で治療方針を決定しています。

この5年間では大きさが10mm以下の動脈瘤のクリッピングおよびコイル塞栓術を受けたことによる死亡率は共に0%、 自宅での生活が困難になったり、介護が必要になった合併症率も共に0%となっています。 大きさが10mmより大きい動脈瘤の治療では(最大で40mm)、死亡率は0%、 自宅での生活が困難になったり、介護が必要になった合併症率は約15%となっています 。

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未破裂脳動脈瘤の治療方法

脳動脈瘤の治療には大きく分けてカテーテルを用いて行うコイル塞栓術と開頭手術であるクリッピングがあります。当院ではどちらの方法でも治療ができ、術前の検査結果から、より安全に治療できる方法での治療をお勧めしています。

1.脳動脈瘤コイル塞栓術

この数年、当院で治療した未破裂動脈瘤の患者様のうち約6割はコイル塞栓術で治療を行いました。平成23年末に最新式の血管撮影装置を導入し、より安全な治療ができるようになっています。

具体的な方法は血管の中にカテーテルを通して動脈瘤内部に到達させ、瘤内にプラチナ製のコイルを詰めて内部に血流が入らないようにする方法です。この治療法はデバイスの進歩に伴い、コイル塞栓術で治療ができる動脈瘤は増えています。

脳動脈瘤コイル塞栓術

脳動脈瘤コイル塞栓術

この治療法の利点は

  • 大腿部の穿刺のみ(数mmの皮膚切開)で治療が可能であり、開頭の必要がなく低侵襲である。(約1週間の入院期間で退院できます。)
  • 脳に全く触れることなく治療が可能である。
  • 脳の深部でも大きな技術困難はない。

逆に欠点は

  • 治療中に出血を来した場合は、止血するのに開頭手術と比べ困難な場合がある。
  • 対応できる動脈瘤の形態がクリッピングと比較すると限られる。
  • 血栓、塞栓性合併症を来す可能性があるため、周術期には内服治療が必要になる。
  • 治療方法として歴史が浅いため長期治療成績が十分に解明されていない。(当科では1997年より同治療法を積極的に取り入れており、治療後10年以上が経過した症例の長期成績を調査しましたが、再治療を行った症例はあるものの、退院後に破裂した症例は1例もありませんでした。)
2.脳動脈瘤頚部クリッピング

基本的には毛髪が生えている部分の皮膚を切開し、ドリルを使用して頭の骨を開けます。次に顕微鏡を使用して脳の溝やすきまを広げて(よってほとんど脳を傷つけずに)動脈瘤に到達し、周囲の血管や脳から剥離して動脈瘤の内部に血流が入らないようにクリップを掛けます。蛍光血管撮影の導入と術中の神経生理モニタリングにより手術の安全性、確実性が増しています。

脳動脈瘤頚部クリッピング

この治療法の利点は

  • 歴史がある治療法で長期成績にも問題がないことがわかっている。
  • 複雑な形態をした動脈瘤でも対応が可能である。
  • クリッピングを行うことで分枝血管の血流が悪くなる場合は、バイパスを追加することが可能である。

逆に欠点は

  • 脳の深部にある動脈瘤は到達するのが困難な場合がある。
  • 開頭をする必要があり、血管内治療と比べれば侵襲度は高い。(しかし当院ではわずかな部分剃毛で手術を行っており、早期に社会復帰が可能です。入院期間は手術後約10日間です。)
  • 術後しばらくは創部の痛みを自覚するが、内服薬で我慢できないほどの痛みではない。
脳動脈瘤の治療件数
  Coil塞栓術 Clipping
2012年 25 33 58
2013年 30 14 44
2014年 22 26 48
2015年 36 21 58
2016年 26 22 48

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治療困難な脳動脈瘤の治療

未破裂脳動脈瘤の中でも巨大動脈瘤や血栓化動脈瘤はクリッピングやコイル塞栓術単独では治療することができない場合があります。大型の動脈瘤であればあるほど破裂率は高くなることがわかっていますが、施設によっては治療の危険性も高いと判断してそのような動脈瘤の治療方針を経過観察とする場合もあります。

当院ではこのようなクリッピング単独もしくはコイル塞栓術単独で治療が困難な動脈瘤に対しても、それぞれの動脈瘤に合わせた治療方針を検討し、最善の治療法で治療を行っています。このような動脈瘤に対してはバイパス手術を併用したり、開頭手術と血管内治療を併用して治療を行うことで、良好な治療成績をおさめています。

今後は平成29年5月に新設されたハイブリッド手術室を活用し、治療困難な動脈瘤に対してもより積極的かつ安全な治療を行っていきます。

ハイブリッド手術室
[ハイブリッド手術室]

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