住血吸虫症とは

概要
水中で有尾幼虫(セルカリア)が経皮感染することによって感染する血管内寄生虫で、全世界に約2億人の感染者を数える。ヒトに感染するものには4種がある。かつては日本国内にも有病地が存在したが、1996年2月に終息宣言を行った山梨県を最後に、現在国内での流行は認められない。しかし、輸入症例は引き続き見られている。
病原体
主な人体寄生種としては日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)、マンソン住血吸虫(S. mansoni)、ビルハルツ住血吸虫(S. haematobium)、メコン住血吸虫(S. mekongi)がある。

成虫(日本住血吸虫) セルカリア(マンソン住血吸虫)
感染経路
水中で中間宿主貝から游出したセルカリアが経皮的に感染する。日本住血吸虫はミヤイリガイ(Oncomerania sp )マンソン住血吸虫はヒラマキガイ(Biomphalaria sp )ビルハルツ住血吸虫ではBulinusが中間宿主でとなる。ヒト→ヒトの直接の感染はない。

ミヤイリガイ ヒラマキガイ
流行地域
日本住血吸虫:中国揚子江流域、フィリピン、インドネシアなど
マンソン住血吸虫:アフリカ、南米、カリブ海諸国
ビルハルツ住血吸虫:アフリカ、中近東
メコン住血吸虫:東南アジア・メコン川下流域


現在の流行地(WHO発表)
臨床症状
急性症状:幼虫の経皮感染時の皮膚炎(セルカリア皮膚炎)、発熱、全身倦怠、食欲不振、貧血、好酸球増多、下痢、黄疸、腹水貯留など。
慢性症状:虫卵周囲の肉芽腫病巣の線維化によって起こる。日本住血吸虫、マンソン住血吸虫、メコン住血吸虫では肝臓、脾臓の病変が主であるが、ビルハルツ住血吸虫では膀胱壁に主病変が認められる。また、ビルハルツ住血吸虫感染は膀胱癌、日本住血吸虫は肝癌や直腸癌の発生と疫学的な関係が報告されている。虫卵または虫体の異所的栓塞や寄生によって、日本住血吸虫感染で神経症状、マンソン住血吸虫感染で心不全症状が見られることがある。
診断法
ビルハルツ住血吸虫は尿中から、その他住血吸虫では検便で虫卵を検出する。虫卵は長径60〜70μmの円形または長円形で、突起の性状によって虫種の鑑別を行う。ELISAによる血清診断も行われている。

虫卵(日本住血吸虫)
予防法
ワクチンはない。有病地でみだりに野外の水浴をしない。
治療法
駆虫には特効薬(プラジカンテル)があるが、妊娠3ヶ月未満の妊婦には禁忌。慢性症状には対症療法しかない。現在、プラジカンテルに対する耐性株の報告もある。

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