next up previous
Next: 父権肯定確率

サルでもわかる父権(親権)肯定確率

立志編

ここではベイズの定理,父権肯定確率,親権肯定確率の 基本的事項について説明する。

ベイズの定理

親子鑑定における父権肯定確率算出に応用されるベイズ の定理は,

互いに排反である原因A, Bがあって,その各々が生ずる確率を それぞれa, b"とする。一方,ある事象Cが,原因 A, B により生ずる確率をそれぞれ p, qとする。この時, 事象CがA, Bのいずれか一方の原因で起こったとすると,Aが原因で Cが生じた確率Pは

  (1)

である。

というものである。以下具体例を挙げて説明する。


例題1-1. 日本人成人の喫煙率は50%である。いま仮にある血液検査 を行うと,喫煙者では90%,非喫煙者では30%の確率で陽性反応が見 られるとする。ではこの検査で陽性となったものが喫煙者である確率は いくらか。


考え方.まずは実際に無作為に抽出した1,000人の日本人成人にこの検査を 行ったと仮定する。ここで「日本人成人はすべて,喫 煙者か非喫煙者であり,そのほかの者はいない。また喫煙者であり,かつ 非喫煙者であるという日本人はいない」ことを前提条件とする。喫煙者 の定義という別の問題もあるがこの 前提条件はとりあえず諒解可能であると信ずる。このことから, ある日本人成人が喫煙者である確率は,0.5,非喫煙者で ある確率も0.5ということになる。

そうすると選ばれた1,000人のうち500人は喫煙者,500人は非喫煙者 と推定される。そして喫煙者500人においては90%にあたる450人が検査結果 陽性となり,非喫煙者500人においては,30%にあたる150人が検査結果陽性 となる。すなわち計1,000人中600人で陽性となると推定される。 喫煙者で陽性となるのは450人であるから,検査結果陽性者中喫煙者が 占める割合は450/600=0.75となる。 すなわち,0.75が求める確率である。

これを上述のベイズの定理にあてはめると

となる。これらの値を(1)式に代入すると検査陽性者が喫煙者である確率 P
 (2)


と算出される。


例題1-2. 日本人成人女性の喫煙率は25%である。ある日本人成人女性 に対して例題1-1で示した検査を行ったところ陽性であった。この女性が 喫煙者である確率はいくらか。


考え方. 屋上屋を架すようであるが,ここでも具体例で考えてみる。日本人成人 女性1,000人に検査を行ったとすると,このうち喫煙者は250人であり,その 90%にあたる225人において検査結果は陽性になると推定される。一方 非喫煙者750人においては30%にあたる225人において検査結果陽性となると 推定される。したがって陽性者の合計は450人で,このうち喫煙者が占める 割合は 225/450 = 0.5 となる。したがって,ある 女性が検査陽性であった場合その女性が喫煙者である確率は0.5である。

ベイズの定理にあてはめると

となり,(1)式より


例題1-1と1-2で答が異なる理由は,いうまでもなく喫煙率に差がある からである。この場合の検査を行う前の喫煙率のように,特定の 情報を入手する前の状況における確率を事前確率という。一方 検査を行って陽性という情報を得た後の確率を事後確率という。 すなわち,例題1-1と1-2の答の差は事前確率の差によるものである。


ここで例題1-1の(2)式の一部を再掲する。

この式の右辺の分母と分子に2をかけると

となる。すなわち事前確率が(それぞれ)0.5の場合は事前確率を 乗ずる必要がない。したがってベイズの定理で事前確率が0.5, すなわち a = b =0.5の場合上式は


  (3)

とすることができる。


例題1-3.ある男とある子についてある検査を したところ,Cという結果をえた。このCという結果は1組の男と 子が真の父子であれば90%の確率で生じ,無血縁者のペアで検査 した場合には30%の確率で生ずる結果である。問題となっている ある男がある子の父親である確率を求めよ。なお事前確率は0.5と する。


考え方. ここにも一つの隠された前提がある。それは「問題と なっている男は子の父であるか,無血縁者であるかのいずれかであり, それ以外ではない」ということである。これは次節以降で述べる 父権肯定確率算出の際の一般的前提であるので,ここで特に強調 しておく。また事前確率はこの場合,とりあえず 何の情報もないので,父である可能性は50%であると仮定して検査 結果を検討するという趣旨であると理解されたい。

この前提の上に立って計算を行うが,具体例を挙げての説明は省略する。 例題1-1の「喫煙者」 を「真の父子」,「人」を「組」,「非喫煙者」を「無血縁者のペア」, 「陽性」を「C」と読み変えれば,おおよそのイメージは得られると 考える。ここでは,

であることから,(3)式より

が得られる。


例題1-4. 例題1-3において,なんらかの理由で真の父子である 事前確率が0.25と仮定される場合,Cという結果が得られれば 当該父子が真の父子である確率はいくらか。



考え方. 計算方法は例題1-2とまったく同じで,答は0.5となる。


なお,これまで「確率」という語を無造作に使ってきたが,これに 違和感を覚える人もいるかもしれないので付言する。ここに用い られている「確率」という概念はとりもなおさずベイズ流のそれであり, 「確率」という概念には統計学的あるいは哲学的立場によって若干とらえ 方に差があることは事実である。ただ,現実には例題1-1や1-2における 「確率」という語の使用法に強いとまどいを覚える人は少ないと思われ, 多くの人は日常生活の場において,ここに用いられているのと同じような 意味で「確率」という語を使用していると思われる。そういう意味では ベイズ流の「確率」はわれわれの日常感覚にマッチするものだといえる かもしれない。



戻る

aoki 2000年10月25日