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No.4「エコチル調査の大切さと口唇口蓋裂」

今回は、東海地区で最も実績のある口唇口蓋裂センターである、愛知学院大学歯学部附属病院口唇口蓋裂センターの藤原久美子先生の登場です。
普段聞き慣れない口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)という先天性疾患の解説、妊娠予防について、わかりやすくご説明いただきました。

先天異常にはたくさんの疾患があります。中には、症候群といって特徴的な症状を呈する疾患もありますが、ほとんどは原因や予防法がはっきりしていないものばかりです。

体の表面におこる先天性疾患で最も多い〝口唇口蓋裂〟

口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)という疾患をご存知でしょうか? 体の表面に起こる先天性疾患で最も多いもののひとつで、現在日本においては500人にひとり程度の頻度で発生します。 なぜ顔にこのような先天異常が起こりやすいのでしょうか? 実は「顔」は、たくさんの「突起」と呼ばれる組織が左右から対称的に成長し、顔の中心で癒合する大変複雑で繊細な過程でようやく完成するのです。
この突起がうまくつかない状態の一つが口唇口蓋裂であり、その位置や程度によって、完全・不完全、右側・左側・両側、口唇顎裂・口蓋裂などの分類があります。口唇裂とは、唇が割れている状態をいい、口蓋裂とは口の中の上あごが割れている状態を指します。 唇や上あごが割れているため、母乳を吸う力が弱くなったり、口蓋裂の場合には、言葉が鼻に抜けてしまうため発音を習得しづらかったりする場合もあるため、手術を含めた総合的な診療を行うことになります。

口唇口蓋裂は日本人に多い

ところでこの口唇口蓋裂という疾患は、世界的に見ても日本人にとても多いことが知られています。黒人は最も少なく、また同じ黄色人種でもモンゴル人は日本人より発生率が低いといわれています 。 「人種が違う」ということは、目や肌の色を決める「遺伝子が違う」ということを意味しています。 つまり、口唇口蓋裂のなりやすさはある程度遺伝子に依存するので、家族に口唇口蓋裂の方がいる場合には、遺伝的ななりやすさが既に存在する可能性がある、ということになります。
ただし現在では、 口唇口蓋裂の原因と特定されている遺伝子はとても数が多いことが明らかとなっており、単一遺伝子疾患(一つの遺伝子が原因となって引き起こされる病気)とは異なり、多因子疾患(数多くの遺伝子や環境因子が互いに影響し合い引き起こされる病気) と考えられています。
これら原因因子としては、特定の遺伝子変異や、環境因子では抗てんかん薬、コルチゾンなどの薬剤によるもの、ビタミンA,ビタミンB12、ビタミンDなどの欠乏により引き起こされるもの、あるいはダイオキシン、貧血によっても引き起こされることなどがこれまで報告されています。

予防法とその時期

遺伝子は変えることができません。ですから、予防法を考える場合には、環境因子に対するアプローチを考えていく必要があります。先ほども述べたとおり、ビタミン類の十分な摂取はとても大切です。 なかでも葉酸は、プレママの方はよくご存じだと思いますが、妊娠期に葉酸が欠乏すると口唇口蓋裂だけでなく様々な先天異常を引き起こすことが明らかとなっており、十分な葉酸の摂取が産婦人科医会によっても勧められています。
でも、実は「妊娠が分かってから葉酸を摂取しても効果的とはいえない」ということをご存知でしょうか?
一般的に妊娠に気づくのは妊娠後4~6週目といわれていますが、この時期に顔の形成はすでに始まっているのです。ですから、妊娠前からの適切な葉酸摂取がより推奨されているのです。

疫学調査=エコチル調査の重要性と将来性

全国一斉に行うエコチル調査では10万人の妊婦さんに協力してもらいますが、実は口唇口蓋裂のような500人に1人くらいの 発症率の病気については、充分分析することができない可能性があります。 私の所属する愛知学院大学歯学部口唇口蓋裂センターは、東海地域で生まれた口唇口蓋裂の赤ちゃんの診察拠点となっています。 当センターで蓄積されてきた診療実績と、エコチル調査のデータを連結して解析することで、口唇口蓋裂の要因を学術的にも国内で初めて明らかにできる可能性があるのです。

2012年4月よりエコチル調査に参加頂く妊婦様には、愛知ユニットセンターが独自に企画するエコチル調査質問票にもご協力をお願いしております。この追加調査でプレママと家族の生活習慣や食生活などの追加情報をお尋ねしますが、この追加調査にご協力いただくことは、口唇口蓋裂の原因の特定へとつながります。質問票の量も多く、ご負担をおかけいたしますが、どうぞ皆様のご協力をよろしくお願い致します。