ホーム > エコチル特集 > 環境と子どもの健康 最前線 > No.3 「子どもたちのためにも歯を大切に」

No.3 「子どもたちのためにも歯を大切に」

歯周病と妊娠

歯周病とは?

今日、日本の成人の約80%は歯周病(歯肉炎あるいは歯周炎)に罹患しているといわれています。歯周病は歯牙喪失を引き起こし、それに伴って味覚異常や唾液分泌異常を生じるだけでなく自律神経系の異常を招くことが明らかとなってきました。さらに近年、歯周病が心筋梗塞や脳梗塞などの循環系疾患や糖尿病のようなメタボリック症候群や、老人性肺炎、骨粗鬆症、早産・低出生体重児などの様々な全身性疾患のリスクファクターになっていることが指摘されるようになってきました。

1997年発表されたアメリカにおける疫学調査では歯周病罹患者は健常人に比べて2・7倍の高い頻度で心臓発作を起こしていることがわかり、アテローム性動脈硬化症におけるプラークの45%以上に歯周病原性細菌であるジンジバリス菌が検出されることが報告されています。また歯周病の妊婦さんは健康な妊婦さんより高い割合で早産や低体重児出産を起こすことも指摘されています。これらのことは歯周病の歯科領域のみならず全身健康維持における重大性を認識させるものです。こういった状況にもかかわらず、歯周病がどのようにして全身性に影響を与えるのかなど詳しいことは未だ明らかにされていません。

私たちは歯周病原性細菌やその細菌が産生する物質(酵素)の早産・低出生体重児との関連ついて研究をしています。

早産や低出生体重児に気をつけよう

近年我が国において周産期・新生児医療の発展により多くの幼い命が救命できるようになりましたが、出生しても死亡率の高い早産児や低出生体重児の救命は残された解決すべき重要な問題です。 早産児は生命をとりとめても重篤な後遺症の残る場合が多く、不足している我が国のNICU(新生児集中治療室)病床数を圧迫し、さらに生涯にわたりQOL(生活の質)や経済的負担は患者とその家族にとって深刻な問題です。それゆえに我が国全体及び周産期・新生児医療に関わる医療従事者全体にとってその解決とintact survival(後障害ない生存)は決して妥協を許さぬ大きな目標です。我が国の周産期・新生児医療は過去に比べ確実に進歩しまし たが、早産は未だ全分娩の約5%を占め、主に早産の結果である低出生体重児は1980年は4・2%、2000年は8・3%と2倍近い増加を示しています。近年のライフ・スタイルの変化のひとつである晩婚化の結果、不妊症に悩むカップルが増加しています。そして不妊治療で排卵誘発剤を使用する結果として多胎妊娠が増加していることは産婦人科領域で大きな問題となっています。多胎妊娠はハイリスク妊娠であり明らかに早産率が高く、今後さらに 早産児は増える可能性があります。早産の25%は母体や胎児異常など治療のために娩出となった症例ですが、残りの75%は前期破水や切迫早産の結果です。前期破水や切迫早産の原因として感染・炎症によるものが大多数を占めることが最近明らかになってきており、その中に歯周病によるものが含まれていれば、今後適切な歯周病治療または予防ができれば早産の発症を減少させることの出来る可能性は大きいと考えられます。

また新生児死亡の大多数は早産児であり、早産であることそのものの未熟性が主な原因とされています。新生児死亡率を下げ、早産児特有の後遺症を避けるためにも最も重要なことは早産を予防することが最優先事項であると考えられます。

この数年早産と歯周病が関連していることが国内外で報告されています。1996年頃より現在に至るまで多くの発表がされており海外での研究のひとつに、歯周病罹患妊婦の早産のリスクは健常妊婦の約6倍であるという報告があり注目に値します。歯周病の原因のひとつとして、ジンジバリス菌が歯周病原性細菌として関与していることが明らかになってきました。ジンジバリス菌はジンジパインという強力な毒性を持った酵素を産生します。

今までの研究結果からわかること

至るまで多くの発表がされており海外での研究のひとつに、歯周病罹患妊婦の早産のリスクは健常妊婦の約6倍であるという報告があり注目に値します。
歯周病の原因のひとつとして、ジンジバリス菌が歯周病原性細菌として関与していることが明らかになってきました。ジンジバリス菌はジンジパインという強力な毒性を持った酵素を産生します。

私たちは他施設と協力しジンジバリス菌と早産・低出生体重児に関する基礎的研究を行っており、マウスにおいてジンジバリス菌を投与すると菌量に依存して早産・死産率の上昇と出産数、出生体重の減少が認められました。またジンジバリス菌は胎盤で増殖しやすいことがわかりました。さらにジンジバリス菌が産生する毒素であるジンジパインを抑える薬が早産や低出生体重児を予防することが動物実験で分かってきました。 今後さらに研究を発展させ原因を究明することで歯周病と早産・低出生体重児の関連を明らかにし、さらには予防法や治療法を確立し たいと思っています。

なにか自分たちにできること

歯周病合併妊婦の早産や低出生体重児のリスクは約6倍と非常に高いのにもかかわらず、現在はまだ充分に周知されていません。私たちは この関連を明らかにすることで広く社会に周知させ、予防(口腔内ケア)や治療(歯科受診)することで早産・低出生体重児を減少させる ことができると考えています。

現在、歯周病治療には細菌性プラークに対応するための抗微生物作用をもつ抗生物質や消毒薬が主として使われていますが、有益性と有 害性の関係で見た場合ブラッシングによる機械的清掃に優る有効性が認められるものは殆どないといっても過言ではないそうです。 今回、妊婦さんの歯周病罹患の早産リスクに関する日本における初めての大規模調査を行いますので、ご理解とご協力をお願い致します。「妊婦さんも歯が命」です。歯周病に気をつけて、元気な赤ちゃんを迎えましょう。