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環境と子どもの健康最前線 #16_睡眠習慣と健康

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
平成18年 産業医科大学卒業臨床研修を経て、
平成20年よりブラザー工業(株)の産業医として
働く人の健康や作業環境に関する諸問題に取り組む。
平成28年より名古屋市立大学大学院医学研究科環境労働衛生学分野に
助教として着任。化学物質のリスク評価について研究を進めている。
 
 
はじめに
皆さんは、良い睡眠をとれていますか?ぐっすり眠れることは一日の疲れを癒し、心身を整えるためにとても大切なことですね。「いやなことがあっても、寝てしまえば大丈夫!」という方もよく見受けます。
私が産業医を務める企業では、従業員の方から健康に関して様々な相談が舞い込んできます。
その中で、睡眠に関して困っているというお話を伺うことがよくあります。厚生労働省の国民健康・栄養調査(平成二十六年)においても、直近の1ヶ月間で「睡眠で休養が充分にとれていない」と回答した人の割合は三十代で27.5%、四十代で32.5%と報告されていますので、原因は様々ですが、働き盛りの年代で睡眠について困っている方が多いことがよく分かります。このような状態で仕事を続けていると、思わぬミスをしてしまったり、事故を起こしてしまったりする可能性があります。また、心身に不調をきたし病気になってしまうかもしれません。そのため、「なぜ休養が充分にとれないのか」という点について、相談者と話をしながら一緒に探っていきます。本当に治療が必要な場合もありますが、生活習慣を見直すことで改善されるケースも散見されます。
 
 
どのくらいの睡眠時間が必要なのでしょう?
それでは、どのくらいの睡眠をとればよいのでしょうか。よく「8時間睡眠」という言葉を聞きますが、これは、様々な研究において7~8時間の睡眠時間の集団が、体重や死亡率が最も低くなるという結果に基づいています。しかし、睡眠時間は個人差が大きく、これよりも短い(長い)からといって、すぐに健康への悪影響が起こる訳ではありません。起床時の気分が良く疲れもとれており、午前中の活動が眠気に襲われることなくできるような睡眠時間が、一つの目安です。また、最近の研究によると、夜間にまとまって眠ることのできる時間は年代ごとで異なっていることが示されています(表1)。もちろん、その日の疲れ具合によっても変わってきますが、これも一つの参考となります。
 
 
 
 
寝る前のカフェインは要注意
必要な睡眠時間よりも短い時間しか眠れずに困っているときには、仕事や趣味など、様々な理由で寝るまでの時間が遅くなっていることがよくあります。したがって、まずはそこから改善していきます。また、寝つき自体が悪い場合には寝る前の過ごし方が問題になっていることがあります。目を覚ます刺激となるテレビやパソコンを寝る直前は控え、眠りを妨げるカフェインが入ったコーヒー・紅茶などの飲み物はなるべく寝る時間の3~5時間前には摂らないようにしたほうが影響は少ないようです。睡眠環境としては、過ごしにくい温度や湿度、照明の消し忘れ、家電の音などが眠りにくさの原因になっていることもあり、これらの環境を良くすると眠りやすくなることがあります。このように、睡眠をとるための生活習慣や環境を整えることを、「睡眠衛生」と呼びます。
 
睡眠環境を整えて
睡眠時間自体はおおむね良さそうなのに疲れがとれないという場合、睡眠の質に問題がある可能性があります。寝ている間のいびきが大きく、呼吸が一時的に止まるというような症状がある場合には、「睡眠時無呼吸症候群」の可能性がありますので精密検査を受けたほうがよいでしょう。また、足に違和感(ムズムズするような感覚)があって眠れないという症状があると、「むずむず脚症候群」という病気の可能性があります。
他にも、睡眠リズム自体がずれてしまっている「睡眠相後退症候群」という状態もあります。これは、就寝・起床時間が遅い方向にずれてしまう生活リズム異常で、睡眠時間はとれているものの、学校や会社に間に合わないという社会的な問題が起きてきます。この場合は、起床時間を早めるために朝の光をしっかり浴びることが有効です。
このように、睡眠問題の背景には病的なものだけではなく生活習慣も関係しています。そのため、幼少期から睡眠環境について考えていくことが大事です。
 
子どもの睡眠
生まれてきた赤ちゃんは、生後8週目くらいまでは昼夜問わず寝たり起きたりを繰り返します。9週目以降になると少しずつまとまった睡眠をとれるようになってきますが、起床・就寝時刻が少しずつ毎日ずれていきます。もともと人間に備わっている体内のリズムは25時間周期ですので、この頃の赤ちゃんはそのリズムにしたがって毎日1時間ずつ睡眠時間がずれていくイメージです。このリズムを1日24時間の生活にあわせてくれるのは、「朝の光」ですが、次第に赤ちゃんにも光の影響が表れ、おおよそ16週目を過ぎてくると昼間は起きて夜は眠るというパターンが定着してきます。このようにして、徐々に社会生活を送れるようになってきます。
 
日本の子どもは寝る時間が遅いの?
ところで、ある民間企業の調査では、日本の乳幼児は外国に比べて就寝時刻が遅いと報告されています。諸外国では午後10時以降に就寝する割合が16-27%程度(0-36ヶ月)なのに対し、日本では実に46.8%の乳幼児(0-48ヶ月)が22時以降に寝ています。皆さんにご参加頂いているエコチル調査でも睡眠に関する質問が含まれていますが、3歳時点では29%のお子さんが午後10時以降に就寝しています(図1)。先述の調査ほど割合は高くありませんが、この睡眠習慣が、子供の成長にどのような影響を及ぼす可能性があるのか、はっきりとしたことはまだ分かっていません。いくつかの研究報告によれば、夜型の生活習慣と児童期から思春期における行動との関連性が示されており、より詳しい研究が必要です。エコチル調査は13歳まで継続して子供たちの健康や成長の様子を確認していくため、睡眠との関連についても新たな結果が得られると期待されます。子供たちの健やかな育児環境づくりのために、今後とも、ご理解・ご協力のほど、よろしくお願い致します。
 

 

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