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No.044 <瑞友会賞 臨床部門賞>
「受賞課題:日本の乳癌領域における臨床試験の発展と新規薬剤開発に関する貢献」

[更新日:2017年10月12日/掲載日:2017年7月24日]

受賞報告:「瑞友会賞(臨床部門賞)受賞のご挨拶」

岩田 広治(いわた ひろじ)
昭和62年 名古屋市立大学医学部卒
愛知県がんセンター中央病院 乳腺外科部長・副院長

この度は名誉ある瑞友会賞(臨床部門)を受賞させていただき、誠にありがとうございます。昭和62年に大学を卒業後一貫して乳癌診療に携わってきたことが評価されたことは大変な喜びであると共に、恩師である故小林俊三先生、先輩の岩瀬弘敬先生はじめ同門の諸先輩、同僚、後輩の先生方のおかげと改めて感謝申し上げます。

大学を離れて愛知県がんセンターに着任して既に20年以上が経過し、大学の関連行事や学生教育とは縁遠い毎日を過ごし、同門会にも不義理をしていた状況でしたので、今回の知らせに正直驚きました。しかし名古屋市立大学の卒業生という自覚を忘れたことはなく、同窓会総会での受賞は、今後の仕事の励みにもなっています。

大学を卒業後、乳癌診療の道に飛び込み、臨床の第一線で診療を行ってきました。ご存知のように日本における乳癌の患者数は、近年飛躍的に増加し、手術術式の縮小化や新規薬物療法の開発など、この20年で目まぐるしく変化を遂げました。幸い愛知県がんセンターというフィールドを得たことで、この変革期に日本をリードする仕事に携われたことはラッキーであったと思っています。特にHER2陽性乳癌に対する分子標的薬Trastuzumabが術後補助療法として確立した大規模なglobal trialに参加し、貢献できたことが後の人生を大きく変えました(NEJMという一流誌に名前を掲載していただくご褒美まで頂きました)。その後は、多くの分子標的薬の開発に日本の代表として深く関わる機会を得て、多くの得難い経験もさせていただいています。今年8月にも新規薬剤のアメリカでの承認申請に関係して、アメリアの厚生労働省にあたるFDA監査を受けました(無事に監査は終了しています)。過去にがんを対象とした治験で日本の施設がFDA監査を受けたことは、数えるほどしかなく、このような貴重な経験の醍醐味を肌で感じた次第です。

さらに数年前からは日本の臨床試験の中核であるJCOG(Japan Clinical Oncology Group)の乳癌グループの代表を仰せつかり、全国40施設を率いて新規の臨床試験を遂行中であり、世界の標準治療を変えるようなエビデンスの創出に向けて努力をしているところです。その他日本の臨床試験グループのCSPOR, JBCRGの中心メンバーとしても活動をしていて、私の医師人生で臨床研究(臨床試験)は大きなウエートを占めています。

また大学を離れて学生教育の現場から遠のいてしまいましたが、全国の若手の先生方に臨床試験のノウハウを教育する取組みを5年以上続けています。"岩田塾"と呼ばれ、この会の卒業生も全国に100人を超え、今後の日本の乳癌診療を支えてくれる人材が育ってきて頼もしい限りです。大学も昨年、遠山先生が乳腺外科初代教授に就任し活気が出ています。今後はがんセンターへの研修をはじめ多くの交流が生まれ、次世代のリーダーとなるような人材を育成し、小林先生、岩瀬先生から続く名古屋市立大学の潮流を絶やすことのないようにすることも私の役目の一つと自覚しています。

最後に病院の管理職となり、多くの学会の要職(乳癌学会理事、臨床腫瘍学会理事など)を務めることで、臨床の現場で自分自身が活躍する機会は少なくなりましたが、"Patient First"の理念は常に忘れずに今後も人生を歩んでいきたいと思っています。


略歴
昭和62年
名古屋市立大学医学部卒業
平成1年
豊橋市民病院桜ヶ岡分院 外科医員
平成7−8年
名古屋市立大学病院第2外科 臨床研究医・助手
平成15−17年
愛知県がんセンター(中央病院)乳腺外科部長
平成24年
愛知県がんセンター中央病院 副院長(兼任)
岩田 広治氏 授賞理由

愛知県がんセンター乳腺外科では、がんにおける最初の分子標的治療薬であるトラスツズマブの国際共同医師主導治験に参加した。その後に乳癌治療に承認されたほぼすべての薬剤開発に中心的な役割を担った。さらに、全国規模の臨床試験グループであるNSAS-BC (National Surgical Adjuvant Study of Breast Cancer)やJBCRG (Japan Breast Cancer Research Group)の中心メンバーとして、JCOG (Japan Clinical Oncology Group) 乳がんグループの代表として、活躍してきた。その豊富な知見から、日本のみならず世界の臨床試験ステアリングコミティ―のメンバーとしても活躍している。また日本未承認薬の承認申請を目指した世界共同医師主導治験の日本の調整医師でもある。

また日本の臨床医(特に若手医師)に臨床試験の重要性を教育し、日本における臨床試験文化の熟成に大きく貢献してきた。今はJCOG乳がんグループの代表として参加40施設を束ね、2つのランダム化比較試験を行い、今年中にはさらに2つの試験を開始する活躍ぶりである。日本の新規薬剤開発においての主導的役割を担ってきた貢献は多大である。