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No.042 <瑞友会賞 学術部門賞>
「受賞課題:神経疾患における新規ニューロリハビリテーション法の開発」

[更新日:2017年10月12日/掲載日:2017年7月24日]

受賞報告:「学術賞受賞のご挨拶」

植木 美乃(うえき よしの)
平成9年 名古屋市立大学医学部卒
名市大リハビリテーション医学

この度は名古屋市立大学瑞友会学術部門賞を受賞させていただき、誠にありがとうございました。瑞友会会長の山本喜通先生をはじめ御選考いただきました瑞友会の先生方に厚く御礼を申し上げます。また、名古屋市立大学リハビリテーション医学分野・和田郁雄教授、神経内科・松川則之教授を初め多くの先生方に御指導をいただき、本賞を受賞させていただくことができましたので、この場をお借りして厚く御礼を申し上げます。

受賞対象となりました研究課題は「神経疾患における新規ニューロリハビリテーション法の開発」であります。超高齢化社会を迎えます現代では、早期病態診断による予防医学や運動・認知機能の維持・向上のためのリハビリテーションの重要性が益々高まっております。特にパーキンソン病のような神経疾患は近年患者数が増加しているにもかかわらず、薬剤治療のみでの完治は困難でありリハビリテーションの介入が重要であります。 当院で行っておりますニューロリハビリテーションというものは、神経科学の基礎研究の知識に基づいてそれをヒトに応用したTranslational researchであり、脳機能や脳内ネットワークを非侵襲的に修飾することで運動・認知機能を向上させる試みであります。すなわち、神経疾患では脳の柔軟さ(可塑性)や脳内の神経のつながり・配線(ネットワーク)自体が変容することが脳機能画像法を用いた研究で明らかとなっており、それらを修飾することで機能改善につなげようというものであります。動物モデルでは、脳の神経を直接刺激することでシナプス長期増強/抑制というシナプスレベルでの変化を誘導し、学習や記憶などの行動を変化させることが報告されており、この脳神経への刺激を非侵襲的に行うことで神経疾患患者の脳の可塑性やネットワークを改善させます。

私は神経疾患の中でも特にパーキンソン病の脳可塑性低下や脳内ネットワークの変容に着目し、非侵襲的脳刺激法であります経頭蓋的磁気刺激法や電気刺激法を用いて、パーキンソン病の手の巧緻運動障害や歩行障害に対するニューロリハビリテーションを行ってきました。現在は、患者個々人の歩行パラメータに合致させた脳刺激を適応したオーダーメイドリハビリテーションも行っており、将来的には脳機能画像法とも組み合わせることで個々の患者に応じて最適なリハビリテーションを予測できるようなシステムも開発できればと考えております。また、神経疾患に対してiPSを用いた脳内・脊髄移植の時代が迫っており、パーキンソン病では来年より国内臨床試験が開始されようとしております。ただ単にiPSを移植するだけでは運動・認知機能の向上には寄与しがたく、新たな脳内ネットワークを形成することが必要不可欠となってきます。その際にもニューロリハビリテーションの技術は重要となってくるものと考えており、今後も本研究に精進してまいりたいと存じます。

最後となりますが、本研究を支えて頂きました小鹿幸生前教授、神経内科、リハビリテーション科の諸先生方・スタッフ一同に深く御礼を申し上げます。リハビリテーションはチーム医療となりますので、皆様と受賞させていただいたものと考えております。また、大学院時代より共同研究をさせて頂いている京都大学福山秀直教授に重ねて御礼を申し上げます。皆様、今後とも変わらぬご指導の程、何卒、よろしくお願い申し上げます。


略歴
平成 9年
名古屋市立大学医学部卒業
平成 9年
京都大学医学部附属病院内科研修医
平成18年
米国NIH研究員
平成19年
京都大学医学部附属高次脳機能総合研究センター勤務
平成20−22年
名古屋市立大学病院神経内科臨床研究医・助教
平成26年~
名古屋市立大学大学院医学研究科リハビリテーション医学助教をへて講師
植木 美乃氏 授賞理由

パーキンソン病における脳の可塑性の低下や運動学習障害に着目し、神経機能の可塑性制御に関与する線条体ドーパミン放出や基底核・運動皮質ネットワークについて研究してきた。その知見に基づき、非侵襲的脳機能計測方法によるパーキンソン病関連疾患の早期診断法の開発、脳卒中、神経性疾患の新たなリハビリテーション法を開発する研究を行った。特にパーキンソン病関連疾患のような神経変性疾患が高齢社会化に伴い増加している現状においては、薬剤治療に加えリハビリテーションの介入が重要である。このために、パーキンソン病関連疾患の早期運動機能障害を表面筋電図、経頭蓋脳刺激法、核磁気共鳴画像法を用いた非侵襲的脳機能計測法によって神経機能を的確に診断する新たな技術を開発した。さらに、診断のみならず脳内機能・ネットワーク変容の結果生じるパーキンソン病関連疾患における巧緻運動障害や歩行障害に対して、患者個別の脳内機能・ネットワーク変容を修飾する新たなオーダーメイドリハビリテーションの開発を行い、名市大から発信する新たなニューロリハビリテーションを提案し、注目されている。