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No.036 <瑞友会賞 学術部門賞>
「受賞課題:腎結石形成機序の解明と分子標的治療への応用を目指した基礎的研」

[掲載日:2016年10月25日]

受賞報告:「瑞友会賞受賞のご挨拶」

濱本 周造(はまもと しゅうぞう)
平成13年名古屋市立大学医学部卒
名古屋市立大学医学部 腎・泌尿器科・助教

この度は、第十回瑞友会賞(学術部門)という、 誠に栄誉のある賞をいただきまして大変身に余る光栄に存じます。山本会長をはじめ瑞友会の諸先生、選考委員の先生、これまでご指導賜りました国内外の先生がたにこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。

このたび受賞の対象となりました研究は、「腎結石形成機序の解明と分子標的治療への応用を目指した基礎的研究」です。日本における腎結石の生涯罹患率は食生活の欧米化とともに増加の一途を辿っており、男性では7人中1人、女性では15人に1人にまで達しています。また5年再発率は約50%と高いことから、その成因の究明と再発予防法の確立は世界的に重要な課題となっています。ひと昔前の腎結石に対する研究は、尿中カルシウムやシュウ酸といった無機物質をターゲットにしたものばかりでした。一方、私たちの教室では、前教授であります郡健二郎先生の頃より、有機成分からみた腎結石の治療が重要であると考え、尿路結石の形成機序を遺伝学的な見地から研究してきました。私は幸いにも大学院生時代に、腎結石の形成機序にかかわるものとして、結石マトリックス成分の1つであるオステオポンチン(OPN)について研究する機会をいただきました。その研究過程において、電子顕微鏡で腎結石の初期形成における超微細構造を調べたところ、腎結石の核となる結晶が腎尿細管細胞に付着し、取り込まれ、細胞内で成長している現象をとらえることに成功しました。さらにこの腎結石の形成機序にかかわるものとして、OPNには細胞接着にかかわる特徴的なアミノ酸配列があることに着目して、「OPNのDNA配列の一部分を遺伝子組換えにより機能欠失させることにより腎結石は抑制される」という発見をしました。

本研究は、これまでの基礎研究の成果をさらに発展させ、OPNの特徴的なアミノ酸配列に対するモノクローナル抗体を作成し、モデルマウスにおける腎結石を抑制することに世界ではじめて成功したものです。本受賞は、有効な治療法が確立されていない腎結石の分野において、継続して研究をおこない、分子標的治療法という新しい可能性を示した点をご評価いただいたものと推察いたしております。まだまだ未熟な私ですが、この受賞を励みにさらに精進し、臨床応用を目指した研究を続けていきたいと考えております。今後とも、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

改めまして、大学院の頃よりこのような研究に携わる機会を与えていただき、熱心にご指導を賜りました諸先生や実験助手の皆様に深く感謝申し上げます。研究を通じて、粘り強く研究をおこなう忍耐力、細かな現象を捉える観察力、柔軟な発想力の大切さを学ぶことができ、人間としても成長させていただきました。また本研究は北海道大学遺伝子制御研究所分子免疫分野との連携があったからこその成果であります。上出利光教授には、研究のご指導や抗体の知識をご教授いただくなど、多くの労を執っていただきました。重ねて御礼申し上げます。


濱本 周造氏 授賞理由

腎結石の発症頻度は急増し、生涯罹患率は男性では7人中1人、女性では15人中に1人にまで達している。また5年再発率は約50%と高いことから、腎結石の成因の究明と再発予防の確立は世界的に重要な課題となっている。

私たちは、無機物質に着目したこれまでの治療に限界を感じ、有機物質としてオステオポンチン(OPN)を同定し、その分子機構を世界に先駆けて解明した。その中で、腎結石の初期形成における超微細構造を電子顕微鏡で観察し、腎結石の核となる結晶が腎尿細管細胞に付着し、取り込まれて、細胞内で成長している現象を捉えることに成功した。次いで、この腎結石の形成機序に関わるものとして、結石マトリックス成分であるオステオポンチン(OPN)には、機能的ドメインとなる細胞接着部位(RGD配列)とカルシウム結合領域があることに着目し、「OPN遺伝子内のRGD配列やCa結合領域を遺伝子組換えにより機能欠失させることで腎結石は抑制される」ことを発見した。この一連の成果をふまえ、OPNのRGD配列に近接したアミノ酸配列に対するOPN抗体を作成し、腎結石を抑制することに世界で初めて成功した。現在は、ヒトへの臨床応用に向けた研究を引き続き計画している。つまり、ヒトの腎結石形成における新しいバイオマーカーの探索や新規治療法としての分子標的治療への発展を目指した研究を実施している。