瑞友会トピックス

クローズアップ

「クローズアップ」トップへ

No.036 <瑞友会賞 学術部門賞>
「受賞課題:Prehospital Emergency Medicineの医療過疎地における基盤構築とパイオニアとしての実践」

[掲載日:2016年10月25日]

受賞報告:「瑞友会賞(社会賞)受賞に際して」

間渕 則文(まぶち のりふみ)
中津川市民病院 病院前救急診療科・部長
昭和58年 名古屋市立大学医学部卒

昭和58年卒の麻酔科・間渕則文でございます。この度は同窓会の名誉ある賞をお授けいただきまして誠にありがとうございました。

私は卒業当時、名市大が日本のイニシアティブを握っていた集中治療医学を志し麻酔科に入局してストレート研修を大学病院で開始しました。その中で故青地修教授のご方針で、救急医療についても名古屋第二赤十字病院に非常勤、常勤として勤務しながら研鑽させていただく機会を得ました。その後、勝屋弘忠教授の下で、トロント大学(2年)やカイロ大学(3年)での在外勉強の機会を頂きながら、本学にも集中治療部の助教授として微力ながら貢献をさせていただきました。最終的には医局より岐阜県立多治見病院救命救急センターに赴任し、岐阜県東濃地方の救急医療を担当する中で、本邦初の乗用車型ドクターカーを運用する機会に恵まれました。自分も現役で活躍できる時間が残り10年となったところで医局を離れさせてもらい、東濃地方の中でも更に医療環境の厳しい長野県境の町、中津川で中山間地でのドクターカーによる地域救急医療の可能性を研究してみたいと考え現在に至っております。既に欧州では一般的な診療形態である、「病院前救急診療科Prehospital EmergencyMedicine」を日本で初めて標榜し、24時間体制でドクターカーによる地域救急医療を行っています。もとより自分一人で24時間365日の診療を行なうことはありえず、名市大麻酔科の後輩に声をかけ、一緒に活動してもらっていますが、同じ哲学・同じ釜の飯でトレーニングを受けた救急医ですから部門の運用には随分楽をさせてもらっています。

実際の診療は、質的にも量的にも自慢できるほどのことをしておりませんが、欧州をまねたドクターカー専従方式の病院前救急診療科の物珍しさもあり、マスコミには一定の評価をしていただく中で、瑞友会の諸先輩方のお目にも留まったことが今回の栄誉を賜る切っ掛けとなったものと考えております。重ねてお礼申し上げます。

現在働いております中津川市民病院は、名古屋大学の関連病院であることから、当初より名大医学部学生をお世話することがあったのですが、本年からは本学学生もお引き受けしており、2名の6年生を教える機会に恵まれました。まだまだ不十分な点が多いのですが、地域医療としての病院前救急診療を後輩に体験してもらい刺激することも自分に託された仕事の一つと心しております。

同窓会の諸先生方には、益々のご指導ご鞭撻をお願い申し上げます。


間渕 則文氏 授賞理由

欧米では一般的な診療形態である乗用車型ドクターカーを用いた病院前救急診療が普及しており、ドクターヘリも含めた統合的な病院前救急診療が広く実施されていて、24時間体制で現場から医療が提供されている。間渕氏は日本初となるドクターカー専従の診療科・病院前救急診療科を開設して地域医療の新しい形として実践し、約2年間にわたる24時間体制での運用の結果、病院に短時間でアクセス可能な都市部に比較して不利と考えられていた中山間地での救命率(目撃のある心原性心停止の一か月生存率)を大都市とほぼ同じレベルの19%に改善した。さらに高齢化社会の中で問題となる看取り診療について、在宅診療医のグループ化が困難な過疎地で、ドクターカーを用いた対応にも挑戦しており、現在は中津川市内の心肺停止119番通報事案の6割以上は病院搬送を行わず、自宅(老人施設を含む)での看取りとなっており、無益な救急搬送を避け、疲弊する地方二次病院救急室の業務負担軽減にも寄与している。

このような診療活動は、本年度からは本学医学部の実習も開始され、将来の医療を担う後輩にも、欧州流の病院前救急診療実践研修を提供することになり、病院前救急診療の魁を実践し、後進の育成にも貢献しつつある。