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No.018「学術賞受賞の挨拶」

[会報116号(2012年9月30日発行)より]

名古屋市立大学 腫瘍・免疫内科学 講師 楠本 茂(H9卒)

この度は平成24年度瑞友会賞を受賞させていただき、大変光栄に存じます。今回の受賞につきましては、"がん化学療法中のB型肝炎ウイルス(HBV)再活性化への標準的対策法の確立"への取り組みを高く評価していただいたものと存じます。少しこの課題に触れたいと思いますが、B型肝炎ウイルスは全世界で約4億人がキャリア(HBs抗原陽性)であり、約30億人が既往感染例、すなわち過去にウイルスに感染したことがあると推定されています。一方、がん化学療法の進歩により、一部の分子標的治療薬の中には免疫抑制作用を伴うものが加わるようになり、がん化学療法中にHBVが再び増殖、再活性化し、劇症肝炎になって死亡する例が報告されるようになりました。

注目すべき点は、キャリアの方からだけではなく、すでにB型肝炎が治癒したと思われている既往感染の方からも再活性化が起こりうること、そしてキャリアの方以上に既往感染例におけるHBV再活性化による劇症化率、死亡率が高いことが報告されていることです。とくに悪性リンパ腫の治療に導入されたCD20モノクローナル抗体である、リツキシマブ治療において再活性化リスクが高いことがわかり、これらリスクが高いリンパ腫の方を対象とし、2008年より全国68施設の先生方と多施設共同臨床試験を実施してきました(UMIN000001299)。これらの試験結果により、厚生労働省ガイドラインが検証され、安全にがん化学療法が施行できることがわかってまいりました。

この多施設共同臨床試験を遂行するにあたり、血液内科および肝臓内科の多くの先生方のサポートをいただきましたが、特に上田龍三先生、溝上雅史先生、田中靖人先生の御指導なくしては、実行できなかったものと思います。この場を借りて、厚くお礼申し上げます。私たち名古屋市立大学には、各診療科の垣根を越えた研究が計画、実行しやすい環境が整っており、現在の医療現場の問題点を解決し、世界に発信できるエビデンスを創るための絶好の研究環境であることに心より感謝しております。

本瑞友会賞を受賞させていただき、さらに一層精進させていただく所存ですので、今後とも皆様方のご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。