皮膚科専門医研修コースプログラム

 

A.   診療科()の概要

1.    特色

一般的皮膚科診療から、難治性皮膚疾患、そして皮膚悪性腫瘍など、幅広く皮膚疾患の診断・治療を行うことが可能で、重症例を積極的に受け入れ、専門的コンサルテーション・皮膚からみた診断補助を提供しています。特に、光線療法では日本のトップクラスになります。光線療法では、当診療科では本邦でも世界でも最も早くから、乾癬に対するPUVA療法を行い、また近年の新しい光線療法であるナローバンドUVBも本邦ではじめて行いました。このナローバンドUVB療法では、外用などの一般的な方法で有効性が得られない乾癬、白斑、アトピー性皮膚炎などの難治性皮膚疾患に対して良好な治療成績を上げ、当科の大きな特色となっています。その他も、新しい光線治療機器の開発や照射プロトコールの開発など、大学病院の診療の幅を広げるだけでなく、一般診療への普及に向ける仕事も進めております。すでに、産学連携からナローバンドUVB照射機器の開発を行い、この照射機器はすでに一般診療レベルでの診療に用いられております。

また、大学病院であることを最大のメリットとして研究開発を同時に進め、キーワードは、実用化。基礎的研究は、明日への応用につなげる研究を中心として、誰にでもわかるような魅力ある内容を進めています。特に、アレルギー疾患に対しては、創薬につなげるように、免疫系では重要な細胞である樹状細胞を用いて、網羅的な解析をすすめ、臨床実用となる外用薬の開発を行っています。会社とのコラボレーションは重要な戦略の1つでもあります。

しかし、以上の研究開発のみならず、愛知県地域では最も多くの病床を持つ皮膚科であり、1日の外来人数は平均130名と臨床研修には最適な場所にもなります。皮膚病理検査も週に30件以上であり、関東地区の大きな診療施設と遜色のないレベルを維持しております。さらには臨床カンファレンス、セミナーなどで臨床レベルを容易に高めるシステムも構築されていますので、専門医など最短の年数での取得も可能です。病棟ではクリニカルクラークシップを採用し基礎的な能力、外来ではコアプログラムとしてマンツーマン形式で専門領域を研修。約2年間の大学病院研修でオールランドな知識と技能を身につけることになります。また、膠原病を含めた自己免疫疾患では、他科との連携を強め診断から治療まで確立した方法を取っています。

 

2.    指導体制

1)       部長                        森田明理(教授)                       

2)       責任指導医               森田明理(教授)

3)       スタッフ                     苅谷清徳(医局長)

新谷洋一(病棟医長)

小林桂子、山本あい、上尾礼子、金子夏美、磯村巌

 

(南12階皮膚科病棟にて)

 

3.    学会認定施設・標榜施設

1)       日本皮膚科学会専門医研修施設

 

4.    現在行っている新しい治療法

1)       光線療法:ナローバンドUVB、選択的長波長紫外線(UVA1),PUVAバス、ブルーライト

2)       光線力学療法 (photodynamic therapy)

3)       円形脱毛症に対する局所免疫療法

4)       尋常性白斑に対するコンピューター制御CO2レーザーおよびサクションブリスターを用いた植皮治療

5)       QスイッチYAGレーザーを用いた色素性病変の治療

6)       爪変形に対する人工つめ、爪ワイヤー治療

7)       ケミカルピーリング

8)       アトピー性教育入院プログラム  など

5.    特色とする医療の治療成績

1)       外来患者数 1日平均130

2)       新患患者数 1月 150-200

3)       尋常性乾癬新患数 127名(平成16年度実績)

4)       尋常性乾癬入院数 64名(平成16年度実績)

 

6.    研究会、サークル 

1)       名古屋しゃちほこ皮膚科セミナー:診療・研究レベルの向上のため、そして病診・病病連携を視野に入れたセミナー

2)       皮膚科リサーチセミナーシリーズ

 

以上は、名古屋市立大学皮膚科の研究会

 

3)       東海皮膚アレルギー研究会

4)       愛知STD研究会

5)       東海医真菌懇話会

6)       愛知皮膚悪性腫瘍研究会

7)       瑞穂膠原病リウマチ研究会

8)       東海膠原病研究会 など

 

 

B.   研修目標

1.    コース名とGIO

1)       コース名: 名古屋市立大学病院皮膚科専門医研修コース

2)       GIO: 医師としての全般的基本的能力の修練を基盤に、皮膚疾患の高度な専門的知識・診断・治療技術を修得し、関連領域に関する広い視野をもって診療内容を高める。さらに、皮膚科の進歩に積極的に携わり、健全な医療の推進に努め、医師としてまた皮膚科専門医として社会的要望に応える。

 

2.    皮膚科学総論

一般目標:皮膚の正常構造、機能および病態生理の知識に基づき、皮膚疾患の診断上必要な一般的診断法および検査法を修得し、さらに、全身および局所療法の一般的原則および適応を実施できることを目標とする。

 

1)       ユニット1.構造と機能

研修事項

SBO 1:      表皮:ケラチノサイト、ランゲルハンス細胞

SBO 2:      メラノサイト

SBO 3:      真皮・皮下組織:膠原線維、弾性線維、細胞外マトリックス、線維芽細胞、肥満細胞、血管、神経

SBO 4:      付属器:毛包、脂腺、汗腺

SBO 5:      粘膜

SBO 6:      年齢による皮膚機能の違い

学習の計画(a)(f)について、皮膚)および粘膜)構造分子(遺伝子)・細胞・組織・肉眼の各レベルにて機能と関連させて理解するとともに、部位による形態の差異(例:紫外線暴露など)による変化を理解して、人体最外表器官としての重要性を認識する。

 

2)       ユニット2.病態生理

研修項目

SBO 1:      皮膚病態の細胞生物学・分子生物学

SBO 2:      皮膚免疫アレルギー学

SBO 3:      放射線生物学・光線生物学

SBO 4:      微生物学

学習の計画:(a)(d)について、細胞生物学・分子生物学・生理学・生化学・免疫アレルギー学などの基礎知識の上に立って、皮膚科医にとって重要な皮膚の病態生理を認識する。また、放射線生物学、光線生物学、遺伝学などの進歩を皮膚科学に充分に反映させる。

 

3)       ユニット3.診断・検査

研修項目

SBO 1:      診断学

SBO 2:      痒疹

SBO 3:      発疹学

SBO 4:      皮膚病理組織学

SBO 5:      皮膚科学検査法

学習の計画:(a)(e)について、皮膚疾患の診断を正確に行うために診断学、発疹学を修得し、皮膚病理組織学の基本的事項を修得し、さらに一般的および皮膚科的検査法を理解する。

 

4)       ユニット4.治療

研修事項

SBO 1:      治療ガイドライン

SBO 2:      全身療法

SBO 3:      外用療法

SBO 4:      光線療法、放射線療法

SBO 5:      スキンケア

SBO 6:      皮膚科外科

SBO 7:      レーザー療法

学習の計画:(a)(g)について、皮膚疾患に対する適切な治療法の基本的事項を説明し、主要な治療法を実施する。

 

3.    皮膚科学・各論

一般目標:各種の皮膚疾患全般について必要な知識・技術・態度を修得し、実際の診療に当たって個々の症状に応じた適切な診断・治療・指導を独力で行い、皮膚科専門医としての実力が発揮できるようになることを目標とする。

研修項目

1)       皮膚炎・湿疹

2)       紅皮症

3)       蕁麻疹

4)       痒疹

5)       瘙痒疹

6)       薬疹

7)       血管・リンパ管の疾患

8)       紅斑症

9)       角化症

10)   炎症性角化症と膿疱症

11)   水疱症

12)   膠原病および類症

13)   代謝異常症

14)   軟部組織(皮下脂肪組織・筋肉)疾患

15)   肉芽腫症

16)   太陽光線による皮膚障害

17)   放射線皮膚障害

18)   熱傷

19)   皮膚潰瘍

20)   褥瘡

21)   色素異常症

22)   母斑と母斑症

23)   皮膚形成異常

24)   遺伝性結合織病

25)   上皮性腫瘍・神経系腫瘍

26)   間葉系腫瘍

27)   リンパ腫

28)   メラノサイト系腫瘍

29)   ウイルス感染症

30)   細菌感染症

31)   真菌感染症

32)   抗酸菌感染症

33)   性感染症(STD)

34)   動物性皮膚症・寄生虫症

35)   付属器疾患(汗器官・脂腺・毛髪・爪)

36)   粘膜疾患

37)   全身疾患と皮膚

学習の計画:(1)(37)について、以下を習得する。

SBO 1:      定義・分類・症例

SBO 2:      問診・診断・検査(原因検索法)

SBO 3:      発症機序、原因、病態・病理

SBO 4:      症状・経過

SBO 5:      鑑別診断

SBO 6:      合併症

SBO 7:      治療ガイドライン、日常生活指導、一般的局所療法・全身療法

SBO 8:      予防

 

4.    取得できる資格

日本皮膚科学会専門医

 

C.   研修プログラム

ホームページ (http://fine7.com/med_nagoya_cu_derma_dir/html/ncu_ken_pro.html)を参考としてください。

1.    年次計画表

卒後

4

5

6

7

8

9

10

11

12

1

2

3

3年次

大学病院 皮膚科研修

4年次

大学病院 皮膚科研修 もしくは一般関連病院

5年次

一般関連病院 皮膚科研修

大学病院での研修で、膠原病内科研修を最大3ヶ月行うことができます。

4年時以降、名古屋市立大学大学院医学研究科大学院(博士号取得)を選択することができます。

 

2.    研修場所

ホームページ(http://fine7.com/med_nagoya_cu_derma_dir/html/ncu_ikyoku1.html)を参考としてください。

1)       名古屋市立大学病院

4年次もしくは5年次は、以下の2人赴任以上の病院での研修を13年行う。

2)       東市民病院 

3)       名古屋第2赤十字病院

4)       豊川市民病院

5)       聖霊病院

6)       知多厚生病院

7)       いなべ総合病院 

8)       名古屋徳州会病院

 

3.    週間スケジュール

 

午前

外来

外来

外来

外来

外来

午後

病棟

カルテ回診

病棟

病棟

臨床・病理カンファレンス

回診

病棟

抄読会

病棟

ビデオレクチャー

膠原病内科との合同カンファ(膠原病カンファレンス)は、月1回

3年次後半から、関連病院での診療補助を週12回 (院外研修)

 

4.    学会活動

1)       日本皮膚科学会関連学会で発表

2)       論文発表

3)       日本皮膚科学会専門医取得をめざす。現在までの合格率は、100%。

 

5.    研修評価の方法、修了認定

1)       指導医による観察記録

2)       専門医取得のための目標症例の達成

3)       学会・論文発表

 

D.   大学院との関係

4年時以降、名古屋市立大学大学院医学研究科大学院(博士号取得)を選択することができます。

 

E.   研修修了後の進路

5年次終了後も引き続き、皮膚科専門取得のための研修を行い、7年次の夏に取得できるようにめざす。さらなる情報は、ホームページ(http://fine7.com/med_nagoya_cu_derma_dir/html/ncu_ken_pro.html)を参考としてください。