耳鼻咽喉科専門医研修コースプログラム

 

A.   診療科()の概要

1.    特色

耳鼻咽喉科は単に耳,鼻,のどにとどまらず,脳脊髄,眼球を除く頭頸部疾患全般を広くあつかう診療科であり,この中には内科的および外科的プロセスのいずれもが含まれ,最近では耳鼻咽喉科・頭頸部外科学と呼ばれている.当科の特色として機能温存を企図した聴神経腫瘍に対する手術治療戦略,顔面神経障害に対するトータルマネージメント,高度聴力障害に対する人工内耳埋め込み,国内では早期から導入している耳鳴に対するTRT,頭蓋底外科など他科との協調による境界領域の外科治療,QOLの向上を考慮した頭頸部癌治療などがあるが,これら以外に耳鼻咽喉科専門医認定試験受験資格に該当する耳鼻咽喉科・頭頸部外科疾患全般の症例をオールラウンドに経験できる条件が整っており,その診断,治療に関する知識・技術を習得することが可能である.関連する耳鼻咽喉科専門医研修認可施設は下記のように県下15施設あり,各医療圏の中核となっている500床以上の病院がほとんどであるが,これらでの研修も組み合わせてバランスよく症例を経験できるものと考えている.大学病院,関連施設を中心とした研究会もいくつかあり,手術手技,難治疾患,病診連携,神経耳科など基本知識,手技から最新のトピックスまで幅広く学ぶことができる機会も多い.また解剖学的に複雑な耳鼻咽喉科領域の手術を安全に行うために,側頭骨や鼻・副鼻腔,その他頭頸部領域の手術解剖実習も各専門の講師のもと行う予定である.本プログラムでは特にこうした手術技術の習得に重点を置き,将来的に大学病院または関連施設で指導的立場となる人材の育成をモットーとしている.

2.    指導体制

1)       部長                         村上信五(教授)

2)       副部長                      渡邉暢浩(講師)

3)       責任指導医               渡邉暢浩(講師)

4)       スタッフ                     鈴木元彦(講師)

5)       スタッフ                                  小関晶嗣(講師)

6)       スタッフ                  亀井壮太郎(助手)

7)       スタッフ                                  高橋真理子(助手)

3.    学会認定施設・標榜施設

1)        日本耳鼻咽喉科学会認定耳鼻咽喉科専門医研修認可施設(名古屋市立大学病院,名古屋第二赤十字病院,名古屋市立東市民病院,豊橋市民病院,一宮市立市民病院,春日井市民病院,豊川市民病院,厚生連安城更正病院,加茂病院,海南病院,昭和病院,尾西病院,犬山中央病院,大雄会病院,成田記念病院)

 

4.    研究会、サークル 

1)       桜山耳鼻咽喉科手術を考える会

2)       桜山耳鼻咽喉科難治疾患懇話会

3)       桜山耳鼻咽喉科臨床懇話会

4)       桜山神経耳科研究会 など

5)       このほかに野球,サッカーなど他の診療科などと親善試合を行っております.

 

B.   研修目標

1.    コース名とGIO

1)       コース名: 名古屋市立大学病院耳鼻咽喉科専門医研修コース

2)       GIO:耳鼻咽喉科・頭頸部外科の専門領域における医療、福祉に関する問題について、社会のニーズに応えて医の倫理にもとづき、専門医としての診療を適切に実施するとともに、学校保健や公衆衛生に関する問題に対処する基本的な能力を養うことを目的とする。

2.    ユニット構成

1)       ユニット1:外来診療

GIO:耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の必要な症候学の知識に精通し,診察法,外来検査法,外来治療法を習得する.

SBO 1:      耳領域の諸症候に対し適切な診察,鑑別診断,外来治療が行うことができる.

SBO 2:      鼻・副鼻腔領域の諸症候に対し適切な診察,鑑別診断,外来治療が行うことができる.

SBO 3:      口腔・咽頭領域の諸症候に対し適切な診察,鑑別診断,外来治療が行うことができる.

SBO 4:      喉頭領域の諸症候に対し適切な診察,鑑別診断,外来治療が行うことができる.

SBO 5:      頭頸部領域の諸症候に対し適切な診察,鑑別診断,外来治療が行うことができる.

SBO 6:      気管・食道領域の諸症候に対し適切な診察,鑑別診断,外来治療が行うことがで   きる.

SBO 7:      耳鼻咽喉科領域の救急・偶発症に対し適切に対処できる.

SBO 8:      外来診療に必要な薬剤の適正な使用および取り扱いに基づき処方箋を作成し管理できる.

SBO 9:      診断書,証明書を作成し,管理できる.

SBO 10:  医療安全管理の重要性を理解し,医療事故および事故後の対処,または院内感染の対策ができる.

SBO 11:  病診連携を理解し,診療情報提供書およびその返信の作成,管理ができる.

2)       ユニット2:入院診療

GIO:入院診療において適切な治療を行うために,耳鼻咽喉科領域疾患についての基本的臨床の応力を持ち,入院患者の全身,局所管理を適切に実施する.

SBO 1:      正確かつ詳細な問診を行い,POMRに基づき診療録を記載できる.

SBO 2:      全身,局所の診察を行い,所見を診療録に記載できる.

SBO 3:      必要な一般検査を選択,実施し,結果を判定できる.

SBO 4:      他科医師との連携の必要性を判断し,実行できる.

SBO 5:      チーム医療を理解し,看護師その他の医療従事者との円滑な連携を保つことが

SBO 6:      できる

SBO 7:      患者,家族に対し納得のできる説明を行い,インフォームド・コンセントが得

SBO 8:      られる.

3)       ユニット2:検査

GIO:耳鼻咽喉科・頭頚部外科領域の専門的検査に習熟し,適応を定めるとともに,結果の判定と評価を行う.

SBO 1:      耳鏡検査,鼓膜運動検査,顕微鏡下検査,中耳内視鏡(硬性,軟性),耳管機能検査を自ら実施し,結果を判定できる.

SBO 2:      聴覚領域の諸検査(簡易聴力検査,純音聴力検査,語音聴力検査,中耳機能検査,内耳機能検査,自記オージオメトリー,後迷路機能検査,耳鳴検査,ティンパノメトリーなど)を自ら実施あるいは依頼し結果を判定できる.

SBO 3:      平衡領域の諸検査(自発・注視眼振検査,頭位・頭位変換眼振検査,赤外線CCDカメラによる眼振検査,迷路瘻孔症状検査,温度眼振検査,視標追跡検査,視運動性眼振検査など)を自ら実施あるいは依頼し結果を判定できる.

SBO 4:      顔面神経領域の諸検査(視診(40点法,House-Brackmann法など),味覚検査,あぶみ骨筋反射検査,神経興奮性検査(NET)など)を自ら実施あるいは依頼し結果を判定できる.

SBO 5:      鼻・副鼻腔領域の諸検査(前鼻鏡検査,後鼻鏡検査,嗅裂部・鼻咽腔・副鼻腔入口部内視鏡(硬性,軟性)検査,静脈性嗅覚検査,鼻アレルギー検査,鼻腔通気度検査など)を自ら実施あるいは依頼し結果を判定できる.

SBO 6:      口腔・咽頭領域の諸検査(内視鏡検査,味覚検査,唾液腺ブジー検査,唾液腺造影検査,扁桃病巣感染症の検査,終夜睡眠ポリグラフィーなど)を自ら実施あるいは依頼し結果を判定できる.

SBO 7:      喉頭領域の諸検査(間接喉頭鏡検査,喉頭直達鏡検査,喉頭内視鏡検査(硬性,軟性),顕微鏡下検査など)を自ら実施あるいは依頼し結果を判定できる.

SBO 8:      言語領域の諸検査(言語発達の検査,失語症検査,構音の検査など)を自ら実施あるいは依頼し結果を判定できる.

SBO 9:      気管・食道領域の諸検査(気管・気管支内視鏡検査,食道内視鏡検査,食道直達鏡検査など)を自ら実施し結果を判定できる.

SBO 10:  頭頸部領域の諸検査(超音波検査,穿刺吸引細胞診検査,造影(下咽頭・食道,喉頭)検査など)

4)       ユニット4:処置

GIO:耳鼻咽喉科・頭頚部外科領域の専門的処置の重要性を理解し,適応を決定・実施し,効果を判定評価する.

SBO 1:      耳領域の諸処置(耳垢栓塞除去,鼓室穿刺,耳管通気法,耳浴など)の有用性を理解し,手技を実施できる.

SBO 2:      鼻・副鼻腔領域の諸処置(鼻吸引,鼻出血止血法,副鼻腔自然口開大処置,プレッツ置換法,上顎洞穿刺,鼻咽腔出血止血法など)の有用性を理解し,手技を実施できる.

SBO 3:      口腔・咽頭領域の諸処置(口腔・咽頭内貯留物吸引,鼻咽頭塗布,血腫・嚢胞穿刺,扁桃周囲膿瘍穿刺,扁桃陰窩洗浄,唾液腺管洗浄など)の有用性を理解し,手技を実施できる.

SBO 4:      喉頭領域の諸処置(喉頭注入,喉頭蓋嚢胞穿刺など)の有用性を理解し,手技を実施できる.

SBO 5:      気管・食道領域の諸処置(気管内吸引,気管カニューレ交換,食道ブジー法,食道バルーン拡張法,人工鼻の管理など)の有用性を理解し,手技を実施できる.

SBO 6:      頭頚部領域の諸処置(経管栄養注入,カテーテル中心静脈栄養,膿瘍穿刺,膿瘍ドレーン管理,リンパ節穿刺,甲状腺穿刺など)の有用性を理解し,手技を実施できる.

5)       ユニット5:手術

GIO:耳鼻咽喉科・頭頚部外科領域の適切な外科的治療を行うために,基本手術の原理と有用性,危険性を理解し,手術適応を決定する.また患者,家族から手術のインフォームド・コンセントを得て,手術手技を習得するとともに手術前後の管理を行う.

SBO 1:      耳領域の諸手術(外耳道異物除去術,鼓膜切開術,鼓膜換気チューブ挿入術,鼓膜穿孔閉鎖術,先天性耳瘻管摘出術など)の原理と術式を理解し,手技を自ら実施できる.

SBO 2:      鼻・副鼻腔領域の諸手術(鼻中隔矯正術,鼻甲介切除術,鼻内異物摘出術,鼻茸摘出術,粘膜下下鼻甲介骨切除術,鼻粘膜焼灼術,試験的上顎洞開窓術など)の原理と術式を理解し,手技を自ら実施できる.

SBO 3:      口腔・咽頭領域の諸手術(膿瘍切開術,良性腫瘍摘出術,ガマ腫開窓術,唾石摘出術,口蓋扁桃摘出術,アデノイド切除術,咽頭異物摘出術など)の原理と術式を理解し,手技を自ら実施できる.

SBO 4:      喉頭領域の諸手術(声帯結節・ポリープ切除術,喉頭膿瘍切開術)の原理と術式を理解し,手技を自ら実施できる.

SBO 5:      気管・食道領域の諸手術(気管切開術,食道異物摘出術)の原理と術式を理解し,手技を自ら実施できる.

SBO 6:      頭頚部領域の諸手術(頸部膿瘍切開術,リンパ節摘出術,外頸動脈結紮術,甲状舌管嚢胞摘出術,頸嚢胞摘出術など)の原理と術式を理解し,手技を自ら実施できる.

6)       ユニット6:ハビリテーション・リハビリテーション

GIO:耳鼻咽喉科・頭頚部外科領域のハビリテーション・リハビリテーションの必要性と重要性について理解し,適切に実施するために指示,指導,管理する.

SBO 1:      聴覚障害に対するハビリテーション・リハビリテーションの必要性,有用性を理解し,治療計画を立てることができる.

SBO 2:      平衡障害に対するリハビリテーションの必要性,有用性を理解し,治療計画を立てることができる.

SBO 3:      言語障害に対するハビリテーション・リハビリテーションの必要性,有用性を理解し,治療計画を立てることができる.

SBO 4:      顔面神経麻痺に対するリハビリテーションの必要性,有用性を理解し,治療計画を立てることができる.

SBO 5:      そしゃく・嚥下障害に対するリハビリテーションの必要性,有用性を理解し,治療計画を立てることができる.

SBO 6:      睡眠時呼吸障害に対するnCPAPなどの必要性,有用性を理解し,治療計画を立てることができる.

 

3.    取得できる資格

日本耳鼻咽喉科学会 認定耳鼻咽喉科専門医

 

C.   研修プログラム

1.    年次計画表

1)       アカデミックコース:5年次において大学院に進学し,研究とともに大学病院での研修を継続するコース

 

卒後

4

5

6

7

8

9

10

11

12

1

2

3

3年次

市大病院 耳鼻咽喉科研修

4年次

市大病院 耳鼻咽喉科研修

5年次

大学院(市大病院 耳鼻咽喉科研修)

 

2)       クリニカルコース:5年次に関連病院耳鼻咽喉科で研修を行うコース

 

卒後

4

5

6

7

8

9

10

11

12

1

2

3

3年次

市大病院 耳鼻咽喉科研修

4年次

市大病院 耳鼻咽喉科研修

5年次

関連病院 耳鼻咽喉科研修

 

2.    研修場所

1)       名古屋市立大学病院 耳鼻咽喉科,医員

2)       名古屋第二赤十字病院 耳鼻咽喉科,医員またはレジデント

3)       名古屋市立東市民病院 耳鼻咽喉科,医員またはレジデント

4)       豊橋市民病院 耳鼻咽喉科,医員またはレジデント

5)       一宮市立市民病院 耳鼻咽喉科,医員

6)       春日井市民病院 耳鼻咽喉科,医員またはレジデント

7)       豊川市民病院 耳鼻咽喉科,医員

8)       厚生連安城更正病院 耳鼻咽喉科,医員

9)       厚生連加茂病院 耳鼻咽喉科,医員

10)   厚生連海南病院 耳鼻咽喉科,医員

11)   厚生連昭和病院 耳鼻咽喉科,医員

12)   厚生連尾西病院 耳鼻咽喉科,医員

13)   犬山中央病院 耳鼻咽喉科,医員

14)   大雄会病院 耳鼻咽喉科,医員

15)   成田記念病院 耳鼻咽喉科,医員

 

3.    週間スケジュール

 

 

午前

外来診療

手術

外来診療

外来診療

外来診療

手術

外来診療

手術

午後

手術

病棟診療

病棟診療

専門外来

部長回診

症例検討会

診療科会議

手術

検査

病棟診療

手術

検査

病棟診療

 

4.    院外研修

関連施設における外来一般診療,手術

 

5.    学会活動

日本耳鼻咽喉科学会東海地方部会,各種研究会,関連学会への参加

 

6.    研修評価の方法、修了認定

1)       指導医による観察記録に基づく推薦書

2)       目標経験症例数は,日本耳鼻咽喉科学会認定耳鼻咽喉科専門医制度 専門研修記録簿に準じる.

3)       自ら実施できる手術の目標経験症例数は以下のようであり,第一線の病院で耳鼻咽喉科専門医として救急対応できるようになることをひとまずの目標とする.

鼓膜切開術 10例 2.鼓膜チューブ挿入術 10例 3.先天性耳瘻管摘出術 5例   4.鼻骨骨折整復固定術 10例 5.鼻中隔矯正術 10例 6.鼻甲介切除術 10例 7.鼻粘膜焼灼術 10例 8.鼻茸摘出術 10例 9.鼻副鼻腔手術(内視鏡下)10例 10.アデノイド切除術 10例 11.口蓋扁桃摘出術 10例 12.顎下腺摘出術 5例 13.気管切開術 10例 14.声帯ポリープ切除術 10例 15.異物摘出術(外耳道,鼻内,咽頭)あわせて10例 16.頸部リンパ節生検 10

4)       日本耳鼻咽喉科学会東海地方部会,各種研究会,関連学会での発表3回以上

5)       3年間で論文発表1編以上

 

D.   大学院との関係

専門医研修期間中,随時入学可能ではあるが,専門医取得を考慮すれば5年次以降の入学が望ましい.

 

E.   研修修了後の進路

1.    大学病院でチーフレジデントまたは研究医

2.    関連病院への赴任

3.    大学院

4.    留学:主に大学院修了後,アメリカ,カナダ,ドイツなど留学実績あります.