腎臓内科専門医研修プログラム
A.
診療科概要
1. 特色
腎臓内科は、腎疾患に限定しても正確な病理組織診断から腎不全の代替療法、そして腎移植による根治療法まで広範囲であり、膠原病を中心とする臨床免疫から高血圧を中心とする血行動態まで多彩な学際分野を包括している。そのため、正に「内科の中の内科」と考えられる。当科では、腎炎〜腎不全〜透析〜(移植)の全ての経過を一人で管理できることを最低研修目標としている。したがって、腎炎、他疾患の腎合併症、腎不全、透析といった内科的側面以外に、シャント手術(内・外シャント、人工血管移植)などの外科医的な側面、腎生検組織の評価といった病理医的な側面をもっている。他科から信頼される腎臓内科医になるために、特に、電解質、腎炎、腎不全、高血圧についての知識を深める。
2. 指導体制
1)
部長 木村玄次郎(教授)
2)
副部長 福田道雄(講師)
3)
責任指導医 吉田篤博(助教授)
4)
スタッフ 宇佐美 武(助手)
5) スタッフ 本川正浩(助手)
6) スタッフ 加藤信夫(臨床研究医)
7) スタッフ 宮城壮太(臨床研究医)
8) スタッフ 千郷欣哉(臨床研究医)
9) スタッフ 村松 亘(臨床研究医)
10) アメリカ留学中 水野晶紫
(Harvard Medical School at Brigham and Women’s Hospital, Boston;
有名な Barry M. Brenner教授の腎臓内科です)
11) 人工透析部副部長 吉田篤博(助教授)
木村教授は、「高血圧の腎性機序」「糸球体高血圧の臨床的予知」「腎不全の進行抑制」などについて常に考える習慣を教えられる。また、著書「透析療法の基本(東京医学社)」は、既に1万7000部を売り上げた必読書になっている。
吉田助教授は、腎膠原病と妊娠中毒症を専門としており、特に腎病理組織診断の見方には定評があり、徹底した教育が行われる。
3. 学会認定
1)
日本腎臓学会
3)
日本リウマチ学会
4) 日本内科学会
4. 現在行っている新しい治療
1) 腎不全レミッションクリニック(腎機能の回復と寛解を目指す特殊外来)
2) 扁桃摘出 + ステロイドパルスによる IgA腎症の根治療法
3) 特殊な血漿交換療法(LDL吸着、白血球吸着、DFPP)
5. 特色とする医療の治療成績
1) 腎不全の進行抑制対策
2) 腎不全レミッションクリニック外来
3) 腎炎・腎不全教育入院システム
4) 年2回の「患者さんと御家族のための腎臓病セミナー」市民公開講座
5) 扁桃摘出 + ステロイドパルスによる IgA腎症の根治療法
6) 高齢者の膠原病/ネフローゼ症候群に対する免疫抑制療法
7) 高齢者に対するCAPD療法
6. 研究会、サークルなど
1) 臨床病態内科学フォーラム、臨床病態内科懇話会
2) 臨床病態内科学サマースクール
3) 腎とレニン・アンギオテンシン・アルドステロン研究会
4) 「腎不全寛解へのご招待」病診連携研究会
5) 腎病理検討会
6)
「透析と循環器合併症」研究会
7. 腎臓病学習に有用なサイト
1) UpToDate http://www.uptodate.com/
年間 $430- で3回 CD-ROMが更新される腎臓病学から出発した世界的な内科全般の電子教科書。木村がHarvard大学留学中、腎臓内科で開発された。臨床的な疑問に対し、最新のエビデンスで回答してくれる。いかに腎臓病学が内科的であるかが窺える。
2) Hypertension,
Dialysis and Clinical Nephrology http://www.hdcn.com/
登録すれば、毎週 腎臓病と高血圧に関する臨床的に重要な論文がリストアップされ送付される。年間 $85- で有料サイトにもアクセス可能となり、大抵のアブストラクトや有用なシンポジウムもウエブ上で聴講できる。
3) Doctor’s Guide http://www.docguide.com/
個人の要求に応じて改良することにより、毎週、自分に必要な最新情報を獲得することができる。例えば、この1週間で最も読まれた腎臓病に関する論文のリストなどを送信させるように改変することも可能。無料。
8. 臨床研究
臨床病態内科学の臨床研究には定評があります。宇佐美 武 助手が「腎不全マップの発案とその腎不全対策への活用」で、日本腎臓学会最高の賞である大島賞を受賞します(平成17年度)。これまで、臨床研究で大島賞を獲得したのは、他に宇津
貴 博士「腎、食塩と血圧日内リズムに関する研究」(平成11年度)のみで、いずれも木村教授の指導によるものです。これらは、JAMAやLancetなど極めてインパクトの高い雑誌に掲載されています。福田
道雄 講師の「Na排泄の日内リズムや夜間多尿に関する研究」も Kidney
Int 2004などに発表され高く評価されています。
9. その他
現在、腎臓病の最新テキストPereira BJG,
Sayegh MH, Blake P: Chronic Kidney Disease (Companion
to Brenner & Rector’s The Kidney) 2nd Ed, Elservier:
Philadelphia, 2005 の輪読会を実施しています。Post-graduate Lecture,
Journal Club, Research Meeting, 腎生検カンファレンス もあります。
B.
研修目標
1. コースGIO
既に2年間の卒後臨床研修を修了したものが、内科の中でも特に腎臓病や高血圧に関する臨床的ならびに基礎的な専門知識および技能を習得し、優れた腎臓病専門医になることを目的とする。理論とエビデンスに基づいた専門性の高い医療の実践を徹底し、臨床研究や学会発表・論文執筆にも積極的に参加する。一定期間、大学院に進学(兼務)することも可能。腎炎〜腎不全〜透析の全ての経過を一人で管理できることを最低研修目標としている。他科から信頼される腎臓内科医になるために、特に、電解質、腎炎、腎不全についての知識を深める
2. ユニット構成
1) ユニット1: 電解質異常
ユニットGIO: 体液・電解質・酸-塩基の出納を理解し、体液/電解質/酸-塩基平衡異常に対して適切な判断を行い、治療を行える能力を習得する
SBO 1:
腎臓での体液・電解質調節機構を説明できる
SBO 2:
体液・電解質・酸-塩基平衡異常に伴う症状を判断できる
SBO 3:
体液/電解質/酸-塩基平衡異常の補正のための処方が指示できる
SBO 4:
高血圧の腎性機序を概説できる
SBO 5:
高血圧と電解質異常との関係を具体例的に説明できる
2) ユニット2: 腎炎
ユニットGIO: 各種腎炎、糖尿病性腎症、他疾患に伴う腎症の臨床像を理解し、その治療方針を立てる能力を習得する
SBO 1:
各種腎炎の臨床的特徴、検査所見、組織像を説明することができる
SBO 2:
症例の臨床像、検査値から特定の腎炎、腎症が推定できる
SBO 3:
腎症をおこしやすい他疾患を列記できる
SBO 4:
他疾患に伴う腎症の臨床的特徴、検査所見、組織像を説明することができる
SBO 5:
腎生検の適応を判断できる
SBO 6:
腎生検を超音波画像描出下で安全に行える
SBO 7:
腎生検の組織診断を下せる
SBO 8:
IgA腎症に対する扁摘/パルス根治療法の適応を判定できる
SBO 9:
糖尿病性腎症の一次予防、二次予防法を実践できる
3) ユニット3: 腎不全
ユニットGIO: 急性、慢性腎不全の病態を理解し、腎保護療法を行い、適切な時期に透析療法に導入できる能力を習得する
SBO 1:
腎不全を見た際、急性か慢性かを判別できる
SBO 2:
腎臓の形態異常を超音波診断できる
SBO 3:
急性腎不全の病態を鑑別し、病態に基づいた回復治療ができる
SBO 4:
慢性腎不全の病態、新しいCKD病期分類、合併症を説明できる
SBO 5:
腎保護療法、補充療法について具体的な指示が行える
SBO 6:
腎不全寛解クリニックの方程式が理解できる
SBO 7:
腎炎・腎不全教育入院システムを担当できる
SBO 8:
透析導入の判断ができる
SBO 9:
腎不全や透析患者では心血管合併症が多いメカニズムを概説できる
SBO 10:
腎とレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の関係を説明できる
SBO 11:
腎と高血圧の密接な関係を解説できる
4) ユニット4: 透析
ユニットGIO: CAPD、血液透析療法のそれぞれの長所と短所を理解し、適切な時期に導入し、維持管理する能力を習得する
SBO 1:
CAPD、血液透析療法各々の長所、短所を説明できる
SBO 2:
CAPD、血液透析の適応を判断できる
SBO 3:
典型的なテンコフカテ挿入、シャント作成の基本的な手技が行える
SBO 4:
CAPD、血液透析の管理が行える
SBO 5:
至適透析が達成されているかの判定ができる
SBO 6:
透析患者の循環器合併症を早期診断できる
3. 取得できる資格
1) 内科認定医、内科認定専門医
2) 腎臓専門医、透析認定医、リウマチ専門医
3) 日本高血圧学会 FJSH
C. 研修プログラム
1. 年次計画
1) 先ず内科認定医の資格取得を目指し、
2) 2年間の卒後臨床研修で十分に研修できなかった内科系診療科を
3) 3年次に研修する
4) 選択する診療科は2〜3科程度とし、各3〜4ヶ月を予定
5) その後、腎臓内科の研修を開始する
6) 勿論、最初から腎臓内科研修でスタートすることも可能
卒後 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
1 |
2 |
3 |
3年次 (SR1) |
市大病院 腎臓内科 |
○○内科 |
△△希望科 |
|||||||||
4年次 (SR2) |
市大病院 腎臓内科 |
|||||||||||
5年次 (SR3) |
関連病院腎臓内科/大学院進学/海外留学 |
2年間 大学病院で研修することを原則とするが、途中から大学院進学や海外留学も可能
5年目以降は本人の希望や適正を考え進路を決定する
2. 研修場所
1) 腎臓病専門医として更に研鑽を積む
名古屋第二赤十字病院、刈谷総合病院など
2) ある程度独り立ちして腎臓内科医として活躍する
豊川市民病院、常滑市民病院など
3. 週間スケジュール
|
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
午前 |
病棟診療 |
総回診 症例検討 |
外来診療 |
病棟診療 |
透析診療 |
午後 |
腎炎・腎不全教室 カンファレンス (組織検討会など) |
病棟診療 |
病棟診療 診療科会議 |
病棟診療 |
病棟診療 |
4. 院外研修
1) 透析クリニック 夜間透析回診
5. 学会活動
1) 日本内科学会、日本腎臓学会、日本リウマチ学会での発表
2) (発表者には旅費/宿泊費支給;回数制限なし)
3) 症例報告の英文論文化を1編以上
4) (英論文での症例報告には奨励賞(副賞支給))
5) インパクト・ファクター5以上の論文には優秀論文賞(奨励賞との重複可)
6. 研修評価の方法、終了認定
腎臓学会、透析医学会、リウマチ学会の各認定医試験を受験できるだけの症例を経験し、認定医を取得することで研修終了と認定する。
D. 大学院との関係
1. 専門医研修終了後が望ましいが、随時入学は可能
2. 一定期間は重複(兼務)も可能
E. 研修終了後の進路について
1. 本人の希望や適正を考え、進路を決定する
2. 大学院進学や海外留学も可能
3. 比較的若くして腎臓内科助手になれるチャンスも高い
4. 腎臓病専門医として更に研鑽を積む
5. ある程度独り立ちして腎臓内科医として活躍する
6. さらに内科全般を研修する、透析専門医として活躍する、など多彩
7. 透析病院/クリニックを開業されている先輩も多数
8. 名古屋近郊は腎臓専門医が極めて重宝される売り手市場
以上