神経内科専門医研修コース
1.診療科の概要
1)特色
神経内科は,神経系あるいは筋の関連する全ての疾患を診療の対象としています.神経系は,全身の運動器や内臓の機能にかかわっており,その機能障害の原因は,循環不全,代謝異常,炎症,発達異常,老化・変性,圧迫など多岐にわたります.したがって,神経内科の診療には,内科のみならず,多くの診療分野にわたる広い知識と理解が要求されます.
かつてない高齢化社会を迎えるわが国で,神経内科医の需要は増加の一途をたどっています.将来専門医を目ざす人はもちろん,開業や一般内科を考えている人にとって,神経内科を修得することは決して損になることはありません.私たちは,患者さんをGeneralに診れるSpecialistもしくはSpecialityをもったGeneralistを育てることを目標としています.
2)指導体制
研修指導責任者
部長:小鹿幸生(教授,日本内科学会認定内科医,日本内科学会認定指導医,日本神経学会認定神経内科専門医)
指導医
副部長:山脇健盛(助教授)
スタッフ:松川則之(助手)
スタッフ:服部学(助手)
スタッフ:豊田剛成(臨床研究医,大学院生)
スタッフ:上松則彦(臨床研究医,大学院生)
スタッフ:匂坂尚史(臨床研究医,大学院生)
3)学会認定施設・標榜施設
日本内科学会認定教育施設
日本神経学会認定教育施設
日本脳卒中学会認定教育施設
4)診療内容
入院患者
平成16年1日平均入院患者20人(病床数:11(平成17年より14床),稼働率182%)
平均在院日数23日
平成16年の入院患者の内訳(合計317例)
脳血管障害 128
錐体外路疾患 24
脊椎・脊髄疾患 22
中枢神経感染症 19
末梢神経障害 14
多発性硬化症 12
てんかん 11
運動ニューロン疾患 7
不随意運動 6
痴呆 6
脊髄小脳変性症 4
重症筋無力症 4
その他 60
2.研修目標
1)コース名とGIO
@コース名:名古屋市立大学病院神経内科専門医研修コース
AGIO: 内科学に立脚した神経内科医として,common diseaseから神経難病まであらゆる神経疾患に対応し,貢献できる能力を身につけるために, 神経学の基本的知識(解剖,生理,症候学),各神経疾患の病態を深く理解した上で,検査,治療法を修得する.
2)ユニット構成
@ユニット1:基本的知識
ユニットのGIO: 神経疾患の疾患概念,病態を理解するために,神経学の基本的な知識・考え方を習得する.
SBO1: 神経系の構成について説明することが出来る.
SBO2: 神経系の解剖について説明することが出来る.
SBO3: 神経系の生理について説明することが出来る.
SBO4: 神経系の病態(炎症,変性,循環障害,腫瘍など)について説明することが出来る.
Aユニット2:症候学と診察
ユニットのGIO: 患者さんの訴え,問題点を的確に把握するために,病歴聴取,診察法,神経学的な考え方を修得する.
SBO1:神経疾患の特性(発症様式,時間経過など)に配慮しながら,病歴を聴取することが出来る.
SBO2:患者の意識状態,精神状態を把握できる.
SBO3:基本的な内科学的所見(バイタルサイン,外表所見,胸腹部所見,血管雑音の有無など)をとることが出来る.
SBO4:脳神経,運動系,感覚系,自律神経系の所見を系統立ててとることが出来る.
SBO5:得られた異常所見から,障害部位や病態を,神経学的に推測・説明できる.
Bユニット3:検査
ユニットのGIO: 得られた臨床所見から,正確な診断に至るために,的確な検査の計画,検査の手技に習熟する.
SBO1: 各種画像検査(CT,MRI,SPECT,血管超音波検査など)の適応と意義を述べ,読影することが出来る.
SBO2: 髄液検査の適応と,解釈を述べることが出来,安全に検査を施行することが出来る.
SBO3: 脳血管障害の危険因子を挙げ,それらを評価するための検査をオーダーできる.
SBO4: 電気生理学検査(脳波,筋電図,神経伝導検査,体性感覚誘発電位,聴性脳幹反応など)の適応と意義を説明でき,実施できる.
SBO1: 各種神経心理学検査の適応と意義を説明でき,実施あるいはオーダーできる.
SBO2: 各種自律神経系検査の適応と意義を述べることが出来る.
SBO3: 筋生検の適応の判断と,解釈,実施が出来る.
SBO4: 特殊な病態(血管炎,自己免疫疾患,傍腫瘍症候群など)を説明でき,必要な検査をオーダーできる.
Cユニット4:治療
ユニットのGIO: 臨床所見と検査結果からえられた診断に基づき,適切な治療と全身の管理ができるようになるために,神経疾患の治療法の適応と実施法に習熟する.
SBO1: 脳血管障害の病態に応じた急性期治療の選択と実施ができる.
SBO2: 意識障害患者の全身管理を行うことが出来る.
SBO3: てんかん発作の救急処置を説明し,実施できる.
SBO4: 不随意運動に対する,薬物療法の適応,手術療法の適応を説明できる.
SBO5: 運動障害,高次機能障害に応じた,リハビリテーションの適応を判断し,オーダーすることが出来る.
SBO6: 脳血管障害の予防のための治療法を説明でき,実施できる.
SBO7: しびれ,頭痛,めまいなどの症状に対する,対症療法を説明でき,実施できる.
SBO8: パーキンソン病の各種薬物の作用機序を説明でき,症状に応じた処方が出来る.
SBO9: 脱髄性疾患や自己免疫疾患に対する,ステロイド,免疫抑制剤の作用機序,適応,副作用を説明でき,管理出来る.
SBO10: 血液浄化療法の適応を説明し,依頼できる.
3.研修プログラム
1)年次計画表
月 卒後 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
1 |
2 |
3 |
3年次 |
市大病院神経内科にて研修 |
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4年次 |
市大病院にてローテート研修 |
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5年次 |
関連病院内科 または 神経内科にて研修 |
まず神経内科の基本を習得した後,他内科(あるいは他科)でのローテートを基本としますが,その年の人数等により順番が変わることもあります.
Generalに診られる医師の養成をめざしています.内科専門医を目指す方には,相応の配慮をいたします.大学院には,3年次以降随時入学可能です.
2)週間スケジュール
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月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
午前 |
病棟 |
病棟 |
病棟 |
外来 |
AM7:30〜 脳外科合同回診 |
午後 |
教授または助教授回診 PM4:30〜 症例検討会 リハビリカンファレンス 神経放射線カンファレンス |
病棟 |
検査 エコー 筋電図 PM5:00〜 ケースカンファレンス 教室会議 |
検査 脳血管造影 |
病棟 |
4.取得可能資格
必須
日本内科学会認定内科医(最低4年)
日本神経学会認定神経内科専門医(同6年)
任意
日本内科学会認定内科専門医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
日本頭痛学会認定頭痛専門医
日本臨床神経生理学会認定医
5.学位
特別な事情のないかぎり全員取得可能
6.留学実績
海外
Department of Neurology at
Department of Neuropathology at
Department of Neurology at The
Department of Neurology at
国内
自然科学研究機構 生理学研究所(岡崎)
名古屋大学 環境医学研究所
国立循環器病センター
7.関連施設
神経内科常勤医数
遠州総合病院 2人
公立陶生病院 6
津島市民病院 4
土岐市立総合病院 5
豊川市民病院 2
名古屋市リハビリセンター 4
名古屋市立厚生院 2
名古屋市立城西病院 1
名古屋市立城北病院 1
名古屋市立守山市民病院 2
名古屋市立緑市民病院 1
8.参加および発表学会
日本内科学会,日本神経学会,日本脳卒中学会,日本神経治療学会,日本神経病理学会,日本神経化学会,日本老年医学会,日本リハビリテーション学会,日本遺伝子治療学会,日本神経感染症学会,日本神経免疫学会,日本自律神経学会,日本頭痛学会,日本神経救急学会,日本脳循環代謝学会,日本臨床神経生理学会,日本神経心理学会
World Congress of Neurology,International Stroke Society,Society for Neuroscience,American Academy of Neurology,American Stroke Association,European Neurological Association,European Federeation of Neurology,European Stroke Association,Movement Disorders Society
9.現在行っている新しい治療法
1)
急性期脳梗塞に対する抗血栓療法
2)
急性期脳梗塞に対する脳保護療法
3)
各種不随意運動に対するボツリヌス毒素療法
4)
パーキンソン病の脳深部刺激治療(脳神経外科とのコラボレーション)
5)
難治性筋硬直性疾患に対する免疫療法
10.教室の研究,共同研究の概要(基礎・臨床)
1)
記憶形成機構の解明
2)
非家族性アルツハイマー型痴呆の原因論的研究
3)
高力価レトロウイルスベクターを用いた神経系の発育・分化機能の解析
(自然科学研究機構 生理学研究所との共同研究)
4)
遺伝子改変動物の作成およびそれらによる神経疾患の病因解析
5)
軽度認知機能障害患者の治療と予後に関する研究
6)
パーキンソン病患者に伴う頻尿と高次機能障害の治療と予後に関する研究
7)
アルツハイマー病発症におけるストレス因子の関与
-疫学的調査および分子生物学側面から-
8)
脳梗塞急性期における新たな脳保護療法の臨床的,基礎的研究
9)
抗血栓薬の効果における遺伝学的研究
共同研究施設
自然科学研究機構 生理学研究所(岡崎)
医科学研究生体高分子(福祉村病院/長寿医学研究所)
国立循環器病センター
Department of Neurology at
Department of Neurology at
10.問い合わせ先
神経内科ホームページ
http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/neurology.dir/index.htm
迷ったら遠慮なく下記へお問い合わせを.
山脇健盛 853-8093(直通) yamawaki@med.nagoya-cu.ac.jp