膠原病内科専門医研修コースプログラム

 

A.   診療科()の概要

1.    特色

膠原病内科が担当する診療はリウマチ性疾患、自己免疫疾患が中心となります。これらの疾患は多臓器を障害する全身性疾患です。従って膠原病内科は全身の臓器に対する幅広い見識が必要であり、循環器、呼吸器、腎臓、血液、神経学などの基礎能力が養われます。 また、最も診断の困難な不明熱のコンサルトは当科に委ねられることが多く、臨床医としての総合力が必要とされます。

関節リウマチ・膠原病を専門として診療を行っている内科は、東海地区では少ないため紹介患者様が多数あり、多くの症例を経験することができます。当科はこの地区の膠原病の拠点施設として診療にあたっています。

 

2.    指導体制

1)       部長                         上田 龍三 (教授)

2)       副部長                      速水 芳仁 (講師)

3)       責任指導医               速水 芳仁 (講師)

4)       スタッフ                     難波 大夫 (助手)

5)       スタッフ                     前田 伸治 (臨床研究医)

6)       輸血部副部長           坂野 章吾 (助教授)

 

3.    学会認定施設・標榜施設

1)       日本リウマチ学会認定施設 

名古屋市立大学病院、名古屋市立東市民病院、豊川市民病院、岐阜県立多治見病院

 

4.    現在行っている新しい治療法

1)       関節リウマチに対する分子標的療法

 抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体

 抗ヒトIL-6レセプター抗体の第III相臨床試験

2)       シェーグレン症候群

 口腔乾燥症に対するピロカルピンの第III相臨床試験(平成171月終了)

3)       血液内科と協力して、難治性自己免疫疾患に対する造血幹細胞移植、抗CD20モノクローナル抗体療法を行う予定です。

 

5.    特色とする医療の治療成績

1)       外来患者数(概数) 

 関節リウマチ 400, SLE 150, SjS 100, SSc 60, MCTD 40, PM/DM 30名。

2)       入院患者数

 年間約150

 

6.    研究会、サークル

1)       東海膠原病研究会: 東海地区の膠原病内科、腎臓内科、皮膚科、整形外科の臨床の研究会

2)       瑞穂リウマチ・膠原病フォーラム: 市大の膠原病内科、腎臓内科、皮膚科、整形外科の臨床研究会

 

B.   研修目標

1.    コース名とGIO

1)       コース名: 名古屋市立大学病院膠原病内科専門医研修コース

2)       GIO: 内科専門医およびリウマチ専門医として自己免疫疾患の病態を深く理解し、心理社会的要素に配慮した診療を行えるようになるために、自己免疫疾患の疾患概念を理解し、膠原病内科の診療に必要な診察方法、検査方法、結果の解釈、ステロイド剤・免疫抑制剤の使い方を習得する。

2.    ユニット構成

1)       ユニット1: 基本的知識

ユニットのGIO: 自己免疫疾患の疾患概念を理解するために、リウマチ・膠原病に関する基本的知識を修得する。

SBO 1:      免疫臓器・組織の構造と機能について説明できる。

SBO 2:      免疫担当細胞の発生と分化について説明できる。

SBO 3:      血漿蛋白、免疫グロブリン、免疫複合体について説明できる。

SBO 4:      血管炎の病理について説明できる。

SBO 5:      関節の構造について説明できる。

 

2)       ユニット2: 主要症候と診察

ユニットのGIO: 膠原病内科の診療において的確な診察ができるようになるために、主要症侯を理解しその診察法を習得する。

SBO 1:      リウマチ性疾患の特性に配慮した病歴を取ることができる。

SBO 2:      主要な皮疹(紅斑、浮腫、皮膚硬化、結節性紅斑)の鑑別ができる。

SBO 3:      表在リンパ節、甲状腺の所見がとれる。

SBO 4:      口腔内・結膜の乾燥状態の所見がとれる。

SBO 5:      関節所見(腫脹、圧痛、変形など)がとれる。

SBO 6:      筋所見(疼痛、脱力など)がとれる。

SBO 7:      レイノー現象を診断しその鑑別ができる。

SBO 8:      胸部病変(間質性肺炎、漿膜炎、肺高血圧症、心筋障害)の有無を把握できる。

SBO 9:      腎・尿路系病変の有無を把握できる。

SBO 10:  精神・神経病変(精神症状・てんかん・末梢神経障害)の有無を把握できる。

SBO 11:  多臓器にわたる病変を系統的に把握できる。

 

3)       ユニット3: 基本となる検査

ユニットのGIO: 膠原病内科の診療において的確な検査法の選択と結果の解釈ができるようになるために、リウマチ・膠原病の診断、治療に必要な臨床検査法とその意義を習得する。

SBO 1:      血清免疫グロブリン測定の意義を説明し、適応を述べることができる。

SBO 2:      血清補体価測定の意義を説明し、適応を述べることができる。

SBO 3:      自己抗体(疾患標識抗体、抗核抗体、抗DNA抗体、リウマトイド因子、抗好中球細胞質抗体を含む)測定の意義を説明し、適応を述べることができる。

SBO 4:      血清免疫電気泳動法の意義を説明し、適応を述べることができる。

SBO 5:      梅毒反応生物学的偽陽性の意義を説明することができる。

SBO 6:      リンパ球表面マーカー検査の意義を説明し、適応を述べることができる。

SBO 7:      組織適合抗原(HLA)測定の意義を説明し、適応を述べることができる。

SBO 8:      生検組織(リンパ節・皮膚・腎・口唇・甲状腺)を実施 (指示)し結果を解釈できる。

SBO 9:      関節X線写真の読影ができる。

SBO 10:  筋電図検査の意義を説明し、適応を述べることができる。

SBO 11:  指尖脈波検査の意義を説明し、適応を述べることができる。

SBO 12:  サーモグラフィーの意義を説明し、適応を述べることができる。

SBO 13:  骨密度測定の意義を説明し、適応を述べることができる。

SBO 14:  肺線維症マーカー(KL-6など)の意義を説明し、適応を述べることができる。

SBO 15:  骨粗鬆症マーカー(NTxなど)の意義を説明し、適応を述べることができる。

 

4)       ユニット3: 基本となる治療法

ユニットのGIO: 膠原病内科の診療において的確な治療および管理ができるようになるために、リウマチ・膠原病に対する基本的な治療法を習得する。

SBO 1:      副腎皮質ステロイド治療の適応判断、投与法の選択、副作用管理が適切にできる。

SBO 2:      各種免疫抑制剤の適応判断、投与法の選択、副作用管理が適切にできる。

SBO 3:      疾患修飾性抗リウマチ剤の適応判断、投与法の選択、副作用管理が適切にできる。

SBO 4:      血液浄化療法、血漿交換療法の適応を述べることができる。

SBO 5:      リウマチ・膠原病に必要な生活指導(安静度・食事療法・運動を含む)・リハビリテーションの適応を判断し、適切な指示と管理を行うことができる。

 

3.    取得できる資格

1)       日本内科学会          認定内科医・内科専門医

2)       日本リウマチ学会     リウマチ専門医

 

C.   研修プログラム

1.    年次計画表

1)       臨床研修で、認定内科医取得に必要な症例を経験済みで、内科ローテートを希望しない人

卒後

4

5

6

7

8

9

10

11

12

1

2

3

3年次

 

市大病院

膠原病内科研修

 

市大病院

皮膚科研修

 

市大病院

整形外科研修

(関節グループ)

4年次

市大病院 膠原病内科研修

5年次

関連病院 膠原病内科研修

 

2)       臨床研修で、認定内科医取得のための症例経験が不足しており、内科ローテートを希望する人

卒後

4

5

6

7

8

9

10

11

12

1

2

3

3年次

市大病院

内科希望科研修

 

市大病院

皮膚科研修

 

市大病院

整形外科研修

(関節グループ)

4年次

市大病院 膠原病内科研修

5年次

関連病院 膠原病内科研修

 

2.    研修場所

1)       名古屋市立大学病院・内科、医員

2)       豊川市民病院・内科、医員

3)       岐阜県立多治見病院・膠原病・リウマチ科、医員

4)       名古屋市立東市民病院・内科、医員

5)       遠州総合病院・内科、医員

 

3.    週間スケジュール

 

午前

病棟診療

外来診療

病棟診療

病棟診療

外来診療

午後

病棟診療

病棟診療

部長回診

診療科会議

副部長回診

症例検討会

抄読会

病棟診療

皮膚科、整形外科との合同カンファレンス:それぞれ月1

 

4.    学会活動

1)       3年間で日本リウマチ学会総会・地方会、研究会での発表 5回以上

2)       3年間で論文発表1編以上

 

5.    研修評価の方法、修了認定

1)       指導医による観察記録、推薦書

2)       目標経験症例数 (リウマチ専門医 申請資格):30

 3年間で日本リウマチ学会総会・地方会、研究会での発表 5回以上

 3年間で論文発表1編以上

 

D.   大学院との関係

専門医研修期間に随時入学可。

 

E.   研修修了後の進路

1.    大学病院でチーフレジデントまたは研究医

2.    関連病院へ赴任

3.    大学院

4.    留学