内分泌・糖尿病内科専門医研修コースプログラム

 

A.   診療科()の概要

1.    特色

1)       糖尿病患者では各種合併症の発症リスクが高く、それらの総合的な診断・管理にはcommon diseaseの豊富な診療経験が要求される。

2)       また、内分泌疾患は比較的見逃されやすい疾患が多いため、その診断においては幅広い領域での診療能力(診断ストラテジー)が必要である。

3)       すなわち、内分泌・糖尿病内科診療には、総合診療科的能力が不可欠であり、我々は日夜ウィリアム・オスラー博士の教育精神・診療理念にのっとり診療に励んでいる。

4)       当診療科スタッフは一般内科、消化器内科、腎臓内科を経験したものが多く、専門科以外の知識が常に習得できる一風変わった診療科である。

5)       糖尿病内科は、内科の中で最もチーム医療が大切な診療科であるが、当科の症例検討会には、看護士、薬剤師、検査技師も参加している。また、部長は無類の酒好きであり、コメディカルを交えた夜の研修機会も多い。

6)       関連施設の医師も含めると女医が多く、産休や育休などへの対応も手馴れている。

 

2.    指導体制

1)       部長・研修指導医              神谷吉宣 (助教授)

2)       副部長                              岡山直司 (講師)

3)       病棟医長                          今枝憲郎 (助手)

4)       スタッフ                             今井誠司 (臨床研究医)

5)       スタッフ                             山田一博 (臨床研究医)

6)       スタッフ                             木村了介(臨床研修医)

7)       スタッフ                             若見和子 (臨床研究医)

8)       留学中                              大河内昌弘

9)       留学中                              大見仁斎

 

3.    学会認定施設・標榜施設

1)       日本糖尿病学会認定施設 

名古屋市立大学病院、刈谷総合病院、公立尾陽病院

2)       日本内分泌学会認定施設

名古屋市立大学病院、刈谷総合病院

 

4.    特色とする医療の治療成績

1)       糖尿病患者は約1100名フォローしている。(うち1型糖尿病:約50名、プラダ・ウィリ症候群、自己免疫性膵炎、ミトコンドリアDNA異常に伴う糖尿病なども含む)

2)       特に、劇症1型糖尿病、NASHと2型糖尿病合併症例も蓄積してきており学会発表している。

3)       外来患者数(概数) 糖尿病 1100, 甲状腺疾患250, 下垂体前葉機能低下症 20名、 副甲状腺疾患 20, その他、尿崩症、下垂体腺腫、副腎腫瘍、性腺機能低下症など。

 

5.    研究会、サークル

1)       糖尿病イブニングカンファランス:糖尿病療養指導士 単位取得認定(0.5単位)

2)       リピッドカンファランス (年2回)

 

B.   研修目標

1.    コース名とコースGIO

1)       名古屋市立大学病院内分泌・糖尿病内科専門医研修コース

2)       GIO: 糖尿病・内分泌疾患の病態を深く理解し、心理社会的要素に配慮した診療を行うために、総合診療能力を向上させるとともにチーム医療へも参加する。

 

2.    ユニット構成

1)       ユニット1:内分泌・糖尿病内科診療の基本

GIO :内分泌疾患や糖尿病を、総合診療的な立場から診断し治療方針を立てるために必須となる知識や基本姿勢を習得する。

SBO 1:      的確なhistory takingにより、患者から最大限の情報を得ることができる。

SBO 2:      詳細なReview of systemsにより、患者から最大限の情報を得ることができる。

SBO 3:      注意深く正確な理学的診察により、患者から最大限の情報を得ることができる。

SBO 4:      疾患得意度の高い症状・理学的所見を知っている。

SBO 5:      心電図・胸腹部レントゲンを正確に読影することができる。

SBO 6:      各種疾患の検査後診断確率を最も高くする検査を知っている。

SBO 7:      複数の症状・理学的所見を一元的に説明できる病態を追求する姿勢を身につけている。

SBO 8:      無症候性疾患患者の有する心理的背景を推測できる。

SBO 9:      個々の患者において、疾患の自然歴に及ぼす医学的介入の影響を予測できる。

 

2)       ユニット 2:糖尿病の診療

GIO:内科専門医として糖尿病の病態を的確に判断し、心理社会的背景を配慮した診療が行えるようになるために、糖尿病の教育・管理に必要な知識や診療姿勢を習得する。

SBO 1:      糖尿病の病型を診断することができる。

SBO 2:      糖尿病治療ガイドの血糖値コントロール評価を知っている。

SBO 3:      インスリン分泌能やインスリン抵抗性を評価することができる。

SBO 4:      糖尿病性腎症の病期を述べることができる。

SBO 5:      問診や生理学的検査などで糖尿病性神経障害の重症度を評価することができる。

SBO 6:      目標とすべき血圧、血清LDL値を述べることができる。

SBO 7:      問診や生理学的検査などで、おおよその大血管病変の重症度を評価することができる。

SBO 8:      家族歴や病歴から担当患者の糖尿病合併症の自然歴をあるていど推測できる。

SBO 9:      経口糖尿病薬やインスリンに関しての知識をもっている。

SBO 10:  心理社会的背景を配慮し、コメディカルと協力した糖尿病に関しての教育を行える。

SBO 11:  低血糖、シックデイ時の対応法に関しての指導ができる。

SBO 12:  個々の患者の糖尿病教育や薬物療法に対するコンプライアンスを推測できる。

SBO 13:  外来糖尿病患者の入院適応を判断できる。

SBO 14:  外来患者の自己血糖測定値をもとに、生活指導や薬物療法の変更ができる。

SBO 15:  虚偽の摂取カロリー申告や自己血糖測定値を疑うことができる。

SBO 16:  入院中と退院後の血糖コントロールの変化を予測した患者指導できる。

SBO 17:  慢性合併症の病態や急性合併症の有無を加味して的確な医療的介入により適切な速度で血糖値降下を図ることができる。

 

3)       ユニット 3:糖尿病患者の他診療科との連携

GIO:糖尿病患者が他診療科疾患に罹患し併診・入院となったときは、副診療科として病状に適した血糖コントロールができる知識を身につけるよう研修する。

SBO 1:      糖尿病網膜症の評価を適切な時期に眼科医に依頼することができる。

SBO 2:      急性重症感染症時に良好な血糖コントロールをすることができる。

SBO 3:      ステロイド投与がされている患者の血糖コントロールをすることができる。

SBO 4:      周術期に良好に血糖をコントロールをすることができる。

SBO 5:      高カロリー補液に適切量のインスリン製剤を点滴内に入れる指示ができる。

SBO 6:      糖尿病合併妊娠患者の目標血糖値を知っている。

SBO 7:      インスリンで血糖管理している妊婦の分娩時の血糖コントロール方法を知っている。

 

4)       ユニット 4:甲状腺疾患

GIO:内科専門医として、甲状腺疾患の病態を的確に判断した診療が行えるようになるために、甲状腺疾患患者管理に必要な医学知識や診療姿勢を習得する。

SBO 1:      問診で甲状腺機能異常の症状を聴取できる。

SBO 2:      甲状腺機能異常による理学的所見をとることができる。

SBO 3:      正しい甲状腺の触診を行うことができる。

SBO 4:      甲状腺関連血液検査の正しい評価をすることができる。

SBO 5:      バセドウ病を診断し治療方針を立てることができる。

SBO 6:      甲状腺機能低下症のホルモン補充療法を的確に行うことができる。

SBO 7:      甲状腺軟線撮影XPで甲状腺の砂粒状石灰化や気管浸潤所見を読影できる。

SBO 8:      甲状腺エコーで甲状腺癌を疑う所見を知っている。

SBO 9:      甲状腺エコーガイド下でfine needle aspirationを安全に施行することができる。

SBO 10:  HAMAなどのアーチファクトによる甲状腺機能検査異常を評価できる。

SBO 11:  甲状腺シンチ検査の適応と読影ができる。

 

5)       ユニット 5:甲状腺以外の内分泌疾患診療

GIO:症状や理学的所見より視床下部・下垂体・副腎・副甲状腺の疾患が疑われた場合、上級医と相談して診断に必要な検査計画を立てホルモン補充療法や他診療科への加療を依頼することができるよう研修する。

SBO 1:      代表的なホルモンに関してそのアッセイ方法をおおよそ理解している。

SBO 2:      代表的な負荷試験に関して、適応・方法・副作用・結果判定を知っている。

SBO 3:      内分泌性高血圧を疑った時に、上級医と相談し、診断効率の良い検査計画を立てられる。

SBO 4:      副甲状腺疾患を疑うことができ、診断のための検査計画を立てられる。

SBO 5:      二次性肥満症の鑑別疾患を知っている。

SBO 6:      副腎皮質機能低下症を疑うことができ、診断のための検査計画を立てられる。

SBO 7:      副腎皮質機能低下症にシックデイ時の対応に関しての教育ができる。

SBO 8:      問診と理学的所見から性腺機能低下症を疑うことができる。

SBO 9:      多毛の鑑別診断を知っている。

SBO 10:  種々の電解質異常をきたす疾患の鑑別診断を知っている。

SBO 11:  多尿の鑑別診断ができ、診断のための検査計画を立てられる。

SBO 12:  進行した先端巨大症を顔貌や末端肥大などから診断できる。

SBO 13:  典型的なクッシング症候群を顔貌、体型、皮膚所見などから診断できる。

SBO 14:  副腎インシデンタローマを鑑別する検査計画を立てられる。

 

6)       ユニット 6:内分泌疾患緊急症

GIO:糖尿病性昏睡・甲状腺ストーム・副腎クリーゼ・高Ca血症クリーゼ・高血圧緊急症などに遭遇した場合は、上級医と相談し適切な処置を行い救命できるような知識や技能を修得する。

SBO 1:      糖尿病性ケトアシドーシス患者や非ケトン性高浸透圧性昏睡の入院初期治療を行うことができる。

SBO 2:      無自覚低血糖患者に低血糖感知教育を行うことができる。

SBO 3:      甲状腺ストームの入院初期治療を行うことができる。

SBO 4:      副腎クリーゼを疑い、速やかに上級医にコンサルトすることができる。

SBO 5:      Ca血症クリーゼの入院初期治療を知っている。

SBO 6:      高血圧緊急症を呈する内分泌疾患の鑑別診断ができる。

 

3.    取得できる資格

1)       日本内科学会    認定内科医・内科専門医

2)       日本糖尿病学会              糖尿病専門医

3)       日本内分泌学会  内分泌専門医

 

C.   研修プログラム

1.    年次計画表

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10

11

12

1

2

3

SR1

市大病院 内分泌・糖尿病内科研修

SR2

市大病院 内糖内科研修

市大病院XX科ローテ研修

市大病院○○科ローテ研修

SR3

関連病院、留学、大学院市大病院 (内分泌・糖尿病内科研修)

1)       3年次(SR1)は市大病院内分泌・糖尿病内科で、4年次(SR2)はローテーション研修する。

2)       内科認定医取得のため、3年間の卒後臨床研修で不十分であった診療科を4年次に研修する(選択診療科は2〜3程度として、4ヶ月を予定)。

3)       原則として5年次(SR3)は関連病院にて研修する。    

 

2.    研修場所

1)       刈谷総合病院

2)       市立城西病院

3)       愛知県厚生連尾西病院

4)       公立尾陽病院

5)       東海産業団中央病院

6)       小林記念病院

 

3.    主な留学先

1)       国内  神戸大学

2)       海外  NIHルイジアナ州立大学

 

4.    週間スケジュール

1)       月から金まで毎日外来診療あり

2)       毎週火曜日午後:甲状腺エコー

3)       毎週火曜日PM600から症例検討会

4)       毎週木曜日:部長・副部長回診

 

5)       毎月第4水曜日:集団栄養指導(医師参加)

6)       25811月の第2水曜日:大ホールにての糖尿病教室(医師参加)

 

D.   学会活動

1.    3年間で内科学会,糖尿病学会、内分泌学会等の総会,地方会での発表5回以上

2.    3年間で論文発表2編以上

 

E.   研修評価の方法、修了認定

指導医による観察記録,推薦書.

 

F.   大学院との関係

専門医研修期間に随時入学可。

 

G.  研修修了後の進路

1.    大学病院でチーフレジデントまたは研究医、関連病院へ赴任

2.    大学院留学(国内、海外)