施設主催講演会

九州大学医学部附属動物実験施設 教授、毛利資郎 先生

〔講演要旨〕伝染性海綿状脳症の病原体は、核酸を持たない「伝染性の蛋白粒子」であるというプリオン(prion)説をとなえたスクンレー・プルジナーは1997年ノーペル医学生理学賞を受賞した。
 核酸を持たない蛋白質が感染性を持つという機序はいまだに正確には解明されていない。しかし、宿主細胞固有の遺伝子により正常型のプリオン蛋白が作られ、これが、蛋白分解酵素抵抗性の感染型の蛋白に変わることにより、脳内に蓄積して病気を起こすのではないかといわれている。そして、この遺伝子をノックアウトしたマウスは正常型のプリオン蛋白を産生しないため、感染材料を接種しても発病しないことが判明し、プリオン説は支持され、これらの伝染性海綿状脳症を総してプリオン病と呼ばれるようになった。このように、プリオン病研究の進展は、実験動物を用いたアプローチが大きな役割を演じている。