年報第22号(平成27年11月)

1.挨拶 医学研究科長 浅井 清文

 実験動物研究教育センター年報第22号の発刊にあたり、この一年間、センターの円滑の運営にお骨折りいただきました、前三好一郎センター長、現高橋 智センター長をはじめ、センターの職員の皆様、関係の委員会の皆様に心より感謝申し上げます。
 我々研究者は、自身の立てた仮説を立証するために研究を行う訳ですが、その中で、in vitroで可能な実験は、極力、in vitroで行い、動物実験は、どうしても必要な場合のみとし、いわゆる、3R(Reduction;使用動物数の減少、Replacement;動物の代替、Refinement;動物実験の洗練)をできる限り求め努力すべきです。動物実験に携わる研究者は、さらに、Responsibility(研究者の責任)も加え、4Rを十分考慮し、自身の研究計画が適切に行われているか、常に自省しながら研究を進めていくことが求められていると思います。
 さて、実験動物研究教育センターが建設されてからすでに20年余を超えました。これまで、このセンターを利用して数多くの研究成果が発表され、医学の発展に寄与してきました。外観は、今も建設当時とほとんど変わりませんが、内部の施設は徐々に老朽化が進んでいます。平成26年度から27年度にかけ、関係の皆様のご尽力で、入退室システムの更新が行われ、さらに空調設備の更新が予定されています。紙面をお借りし、心より御礼申し上げます。限りある予算の状況で、本来なら行わなくてはならない機器更新も十分出来ていると言えませんが、今後も、研究のアクティビティを損なうことが無いよう、医学研究科としてできる限りのサポートをして参りたいと考えております。
 今後も、センターの円滑な運営にご協力のほど、宜しくお願い申し上げます。


2.年報の発刊にあたって センター長 高橋 智

 先代センター長の三好一郎先生が平成27年3月に東北大学に栄転されたために、次期病態モデル医学講座教授が就任するまでの間、センター長を務める事になりました。よろしくお願い申し上げます。
 皆様の多大なご協力により、現在のところ大きな事故もなく、順調に実験動物研究教育センターの運営を進めております。しかしながら、実験動物研究教育センターは施設が完成してから今年で23年になり、施設内設備の老朽化が目立ち、オートクレーブ、カードリーダー、地下スクリュー冷凍機等の故障・不具合が生じております。オートクレーブは平成21年度に全面的に更新をしていますが、その後現在までに何回か不具合が発生し、随時修理を行なって対処しています。カードリーダーは本年6月に全面的に交換・新設し、地下スクリュー冷凍機については名古屋市から予算を計上して頂き、今年度中に更新を行なう予定となっています。関係者のご努力により、修理・新設に関わる予算の確保をして頂き、ここに厚く御礼申し上げます。一方、マイクロCTなど研究に関わる共同設備につきましては、十分であるとは言い難く、今後も引き続き予算の計上を目指した交渉を進めていきたいと思っています。
 マウス発生工学の発展により、CRISPR/Cas9手法によって容易にノックアウトマウスが作成出来るようになり、当センターにおいてもこのような手法による遺伝子改変動物の作成を行なっております。マウス胚、精子凍結保存、胚移植等も昨年度は56件実施していますが、現在はこのような要望に対して実質的に1人で対応している状況であります。今後、高度技術支援に対する要望がさらに増加する事が予想されることから、医学研究科としてこの技術分野に対する増員を考慮して頂けると幸いです。
 動物実験は医学研究にとって必要不可欠な手法でありますが、それを取り巻く環境は動物愛護の観点から年々厳しくなっており、各研究者は動物実験を遂行するに当たって3R (Refinement, Replacement, Reduction)の原則を強く意識しなくてはなりません。平成18年から施行されている文部科学省「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」に基づき、センターでは教育訓練の実施、自己点検・評価および年報などの情報公開を進めてきましたが、外部機関による検証は未だ受けておりません。全国ですでに90大学が外部検証を済ませており、相当の遅れをとっている形になっています。したがって、近いうちに公私立大学実験動物施設協議会が実施している外部検証プログラムを受審し、動物実験の透明性およびその適合性について広く公表することが喫緊の課題となっています。病態モデル医学教授として着任される次期センター長が外部検証をスムーズに受審できるように、今からその準備を行なっていくことが私の責務であると考えています。
 今後もセンターの健全な運営に取り組んでいく所存でございますので、センターご利用の皆様には御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。


3. 利用状況

(1)各分野月別登録者数
(2)年間月別搬入動物数(SPF、コンベ)
(3)各分野月別搬入動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
●ハムスター、モルモット、マーモセット
(4)各分野月別延日数飼育動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
●モルモット、マーモセット


4.沿革

昭和25年4月 名古屋市立大学設置
昭和45年3月 医学部実験動物共同飼育施設本館完成[昭和45年5月開館]
昭和54年3月 医学部実験動物共同飼育施設分室完成[昭和54年7月開館]
昭和55年3月 医学部実験動物共同飼育施設別棟完成[昭和54年7月開館]
昭和55年4月 第一病理学講座 伊東信行教授が初代施設長に就任
平成元年4月 医学部動物実験施設に名称を変更
平成3年4月 小児科学講座 和田義郎教授が第二代施設長に就任
平成3年5月 新動物実験施設改築工事起工
平成4年11月 新動物実験施設完成
平成4年12月 安居院高志助教授が施設主任に就任
平成5年3月 新動物実験施設開所式
平成5年4月 第二生理学講座 西野仁雄教授が第三代施設長に就任
平成5年5月 新動物実験施設開所
平成9年4月 第一病理学講座 白井智之教授が第四代施設長に就任
平成9年5月  医学部実験動物研究教育センターに名称を変更
平成14年4月 医学研究科実験動物研究教育センターに名称を変更
平成14年9月 安居院高志助教授が北海道大学教授として転出
平成15年4月 宿主・寄生体関係学 太田伸生教授が第五代センター長に就任
平成15年4月 三好一郎助教授がセンター主任に就任
平成17年4月 実験病態病理学 白井智之教授が第六代センター長に就任
平成19年4月 生物化学 横山信治教授が第七代センター長に就任
平成20年12月 病態モデル医学 三好一郎教授が第八代センター長に就任


5.構成

センター長 高橋 智(併任、実験病態病理学 教授)
衛生技師 宮本智美
施設管理員 西尾政幸
飼育委託 株式会社ラボテック
ビル管理委託 日本空調システム株式会社


6.平成26年度 行事

平成26年   4月17日 平成26年度 第1回動物実験規程講習会
平成26年   5月21日 平成26年度 第2回動物実験規程講習会
平成26年   6月24日 平成26年度 第1回運営委員会
平成26年   6月30日 平成26年度 第1回動物実験委員会
平成26年   7月10日 平成26年度 第1回運営協議会
平成26年   8月22日 平成26年度 第3回動物実験規程講習会
平成26年   9月  8日 平成26年度 第4回動物実験規程講習会
平成26年   9月22日 実験動物感謝式
平成26年  10月27日 平成26年度 第5回動物実験規程講習会 (基礎自主研修)
平成26年  11月10日 平成26年度 第6回動物実験規程講習会(基礎自主研修)
平成26年  11月26日 平成26年度 第7回動物実験規程講習会
平成27年   1月16日 平成26年度 第8回動物実験規程講習会
平成27年   2月25日 平成26年度 第9回動物実験規程講習会
平成27年   3月27日 平成26年度 第10回動物実験規程講習会


7.研究成果

 名古屋市立大学大学院医学研究科実験動物研究教育センターを使用し得られた研究成果のうち、2014年中に公表された論文をまとめた。ここには原著のみを掲載し、総説、症例報告、学会抄録等は割愛した。