方法と結果:まず,Cre/LoxPシステムを応用して,任意の時期と臓器に活性型K-ras遺伝子を強制発現できるマウスを作製した。交配によって,p53(+/+),p53(−/+),p53(−/−)の遺伝背景を導入した。これらの動物(8−10週令)の大腿の骨格筋に,活性型K-ras遺伝子の発現を誘導したところ,p53(−/+)とp53(−/−)の遺伝背景の場合においてのみ,多形型横紋筋肉腫が発生した。発生率は,p53(−/+)では誘導後15週にて40%,p53(−/−)では10週で100%であった。p53(−/+)遺伝背景で発生した腫瘍では,p53遺伝子座にヘテロ接合性消失(LOH)が認められた。p53(−/−)遺伝背景にて,誘導後3週の初期病変を調べた結果,幹細胞抗原(ScaI)を発現し,かつ,活発に増殖する筋形成の前駆細胞の異常増殖が認められた。
結語:多形型横紋筋肉腫モデルの開発に成功した。このモデルによって,さらに詳細な腫瘍形成過程の解析,ヒト多形型横紋筋肉腫の治療法の開発が可能となった。
Oncogene (2006 July)に掲載