一般講演 6
沖縄で発見されたアルビノ様野生スンクスの遺伝様式と系統育成

○坪井基枝1,林良敬2,村田善晴2,城ヶ原貴通1,小倉剛3,織田銑一1
1名古屋大・院・生命農学,2名古屋大・環医研,3琉球大・農

 アルビノの表現型は,メラニン色素合成に関与するチロシナーゼ遺伝子Tyrの変異により,この酵素活性が失われることによって現れることが,ヒトやマウス,ラット等,多くの動物で知られている.よく研究されているマウスのチロシナーゼ遺伝子は,第7染色体の中間部に存在し,5つのエクソンと4つのイントロンからなる全長約66kbp,mRNA約3.3kbpと報告されている.マウスのアルビノTyrc/Tyrcは,一塩基置換に伴うアミノ酸の変異に起因している.
 日本における野生スンクスの実験動物化は1973年より進められ,いくつかの変異遺伝子系統が育成されてきたが,アルビノ系統は確立されずにきた.アルビノ様野生個体の捕獲に関しては1968年以降,何例かの報告がある.2002年10月と11月に沖縄県具志川市において,白色の体毛,赤色の眼を呈したアルビノ様野生スンクスのオスが1頭ずつ捕獲され,研究室に導入された.この沖縄産野生アルビノ様♂スンクスを繁殖性が良いネパール(カトマンズ)産由来のスンクスKAT♀と交配し,以後KATに戻し交配し,系統育成を行ってきている.交配実験の結果,このアルビノ様形質は,常染色体単一劣性遺伝子によって支配されていた.繁殖性については,アルビノ様スンクスとKATとで相違はそれほどなかった.
そこで,スンクスにおいても,チロシナーゼ遺伝子の塩基レベルの変異がアルビノ様表現型に関与しているのではないかと考えた.スンクスの皮膚,眼から採取したmRNAをcDNAに逆転写し,PCR法による単離を行っている.PCRのプライマーは,ヒト,マウス,ニワトリのチロシナーゼ遺伝子で保存性が高い領域をもとに作成した.まだ,全領域の単離には至っていないが,この領域だけでみるとスンクスのチロシナーゼは,マウスに比べ,ヒトをはじめとした真猿類のチロシナーゼとの相同性が高いという結果が得られている.
今後,スンクスのアルビノ様原因遺伝子を解析するとともに,繁殖性のすぐれた系統の育成をめざしている.