研究の概要

感覚器に特異的に発現する遺伝子の研究

 神経は優れた情報処理システムであり、1)外界の情報を感覚器で感知する。2)その情報を脳で分析し、何が起 こっているかを認知する。3)さらに認知した情報を元に思考し、どの様に対処するかを判断する。4)その判断に基づいて脳から運動の指令が出て行動を起こ すということを絶えず繰り返しています。たとえば敵が近づくと逃げ、獲物を見つけると追いかける動物の行動パターンは、この様な神経系の働きに基づいたも のです。

 この神経系の外界からの情報収集は耳、眼、味蕾、嗅上皮等の感覚器において行われます。それぞれの感覚器は神経 の一種ですが、進化の過程で特殊な機能を獲得して分化した器官です。視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚・温痛覚に関与する感覚器は、電磁波(光)、音波、化学 物質、物理的刺激、温度など様々な外的刺激を検出する精巧なセンサー蛋白を持っています。これらのセンサー蛋白をコードする遺伝子はそれぞれの感覚器で特異的に発現しています。この様な遺伝子の異常は、感覚器に特異的な疾患にも関与しています。

 我々は感覚器に特異的に発現する遺伝子の同定とその特殊な機能の解析を行ってきました。味覚においては、酸味受 容に関与する遺伝子を同定しました。また、ヒトの味覚の感受性には大きな個人差が存在しますが、その原因の一つが遺伝子と関係あるのではないかと考え、ヒ トの味覚受容体遺伝子を解析し、味覚受容体遺伝子にアミノ酸変異を伴う多様な個人差が存在することを明らかにしました。視覚においては、網膜視細胞に特異 的に発現するレチナールファシン遺伝子をクローニングし、その遺伝子が視細胞の特殊な形態の形成に関与するアクチン束化蛋白であることを明らかにしまし た。その後、この遺伝子は常染色体優性網膜色素変性症の日本における最も主要な原因遺伝子であることが東北大学の和田先生らによって明らかにされました。最近 は、聴覚受容に関与する機械的な刺激に応答するイオンチャネルの研究に取り組んでいます。

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